第31章 忍び寄る終焉※
「俺は帰る。ほの花は元気だ!!派手にな!」
元よりこの男に用事などない。
呼び止められたからうっかり話をしてしまったまでのこと。
屋敷に向かうため踵を返すと、背中で言葉を受け取る。
「そうか。宜しく伝えてくれ。」
「言うか!!」
「小さい男だな。音柱宇髄天元。」
……はぁ?
せっかく孵した踵は何のためだったのか。
ぐるりとゆっくりとその場でふりむくと鋼鐡塚とか言う男をジロリと睨みつけた。
「わぁーったわ!言えばいいんだろ?!言う言う!ド派手に言い腐ってやるわ!鋼鐡塚のクソ野郎がほの花に宜しくって言ってたぞってな!」
「ああ。舞扇折ったりしたらもう二度と作ってやらねぇとも伝えてくれ。」
「それは派手に賛成だ。二度と作んな。伝えておく。じゃあな。」
最後まで表情は窺い知れなかったため、一体誰と話していたのかわからなかったが、もうどうでも良い。
ほの花に武器がなくなれば戦う術が無くなる。二度と作らないって刀鍛冶が言うならもう作らせなければいい。
そうしたらアイツは戦いの場に出ることはないだろう。
後ろからはもう何も聴こえてこないというのに、耳が良い俺は何かを外す音が聴こえてしまった。
見なければ良いのにちらっと後ろを振り返れば、端正な顔立ちをした男がそこにいた。
睨むわけでもなく、ただこちらを見て佇む様は無言でも「ほの花を頼む」と言われているような気がした。
気に食わないのは間違いない。
だが、同じ女を愛した者同士。
願うのはたったひとつだ。
"ほの花が元気で生きているということ"
任せられたと言うならばその想いに応えるまで。
俺は拳を天に突き上げるとその場を去った。
どんな男かと思っていた。
本当はもっと話したい気もした。どんな状況でそうなって、ほの花は刀鍛冶の里でどうだったか?
だが、今の余裕のない俺では聞くに聞けない。
ただ腹が立ってしまって実りはない。
落ち着いたらあの男ともう一度話してみれば違った印象を受けるかもしれない。
それにしても…ひょっとこを取った面構えはまぁまぁの男前だった。
ほの花もあの顔を見たのだろうか。
まぁ、見ただろうな。
看病するのに外さないわけにはいかない。
「まぁ、俺のがド派手に良い男だけどな。」
言葉とは裏腹に舌打ちも出てしまった。