第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花から話は大体聞いてる。世話になったみてぇだなぁ…?まさかこんなところで会えるとは思ってもいなかったぜ…。」
「世話などしていないが世話はされた。薬はクソ不味いがよく効く優秀な薬師だった。」
「はぁ?!不味いっつーな!テメェ…、ほの花に看病されたからっていい気になんなよ?!」
「…今の会話で俺はいい気になったか?落ち着け、音柱宇髄天元。」
ひょっとこのせいで表情は窺い知れないが、やたらと俺よりも冷静を保っていることが馬鹿にされているようにさえ感じられて苛々が募った。
そもそも俺は風邪なんてほとんど引かないと言うのにたまたま引いた時にほの花が近くにいなかったため看病をされなかったという嫌な記憶がある。
他の患者なら何とも思わない。
だが、コイツはほの花に想いを寄せてる筈。
そうなっちまえばただただ煽られているようにしか感じないのだ。
しかし、このままでは怒りが先行してしまい、埒が開かない。
「…どういうつもりだ。ほの花に会いにでも来たのか。」
「此処に来たのは竈門炭治郎という男に刀を届けるためだ。ほの花に会いに来たわけではない。たまたまだ。」
竈門炭治郎…。お前、本当に色んなところでほの花と接点がありやがって…!
怒りが誤った方向に向かいそうになるのを何とか収めながら鋼鐡塚を睨みつけたまま、腕を組んだ。
「…俺が分からないとでも思ったか。何だ、あの舞扇は。世話になったからと言ってあんな装飾付けるなんて思い浮かぶことがひとつしかねぇんだが…?」
「ああ。そういうことか。確かに俺はほの花を嫁にしてもいいと思ってるが、それが何か問題あったか。言い寄ったわけでもないし、無理矢理寝取ったわけでもないだろ。」
抜け抜けと…。
どうやら隠す気はないらしい。
正々堂々と俺と対峙する度胸だけは認めてやろう。
普通の奴ならば、チビって終わりだ。
"嫁にしてもいい"だと?
上から目線も大概にしろよ?
アイツはこっちが頭下げてでも"嫁になってください"と懇願するほどいい女だと言うのに。
コイツとは合わねぇ。
俺の中の全俺がコイツを敵とみなした。