第31章 忍び寄る終焉※
耳が痛い話を散々されて、気が滅入った頃に漸く解放された。
どうせまだほの花は瑠璃のとこにいるのだろうと思い、遠回りをして時間を潰しながら帰ることにした。
ほの花を捨ておけだの。
ほの花離れしろだの。
余計なお世話だっつーの。
たとえ死んでもほの花を守るって決めてるんだ。
横槍を刺されんのは腹が立つ。
だけど、その意見が分からないわけでもないから腹が立つのだ。
ほの花の婚約者としての責務
柱としての責務
優先すべきはどちらか考えるまでもない。
しかし、それを選べない俺は派手に情けねぇのか?好きな女一人守れねぇ男のが遥かに情けねぇと思うのは俺だけなのか?
ふらふらと歩いていると蝶屋敷の方まで歩いてきてしまっていたようで、遠くの方で恐らく竈門炭治郎が誰かに追いかけ回されているのが見えた。
助ける義理もないが、なぜ追いかけ回されているのか気になって近付いて行くと「あ!音柱様!こんにちは!」と蝶屋敷によく出入りしている医療班が挨拶をしてきた。
「ああ。」とだけ返事をして前を見れば、竈門は逃げ切ったのかそこにいるのは刀鍛冶の男だろうか?包丁を持ったまま佇む姿は異様だが、何故か俺の方を凝視してくるのも意味がわからない。
「……音柱…、宇髄…天元。」
「あ?何だよ。呼び捨てにすんな。派手にぶち殺すぞ。」
こちとらほの花のことで些か機嫌が悪いのだ。自分の担当でもない刀匠に呼び捨てにされるのは腹が立つし、こちとら柱だ。
礼儀をわきまえて接してほしいものだ。
「…ほの花は、元気か。」
しかし、その言葉だけで俺は目の前にいる男が誰なのか瞬時に察した。
どうしようもないことだと思っていた。俺も忙しいし、わざわざ刀鍛冶の里に言ってまで問いただすことなどせずともほの花との時間を大切にしたかったからだ。
それが向こうから訪ねてきたと言うのであれば手間が省けたと言って良い。
「……お前が、鋼鐡塚か。やっと…ツラの顔を拝め……ねぇから、そのひょっとこ外しやがれ!!」
「お前に見せる顔はない。ほの花は元気なのかと聞いただけだろ。」
やけに冷静に対応してくる鋼鐡塚という男にこちらの怒りだけがどんどん膨れ上がって臨戦態勢だ。