第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花がまさかそんなに悲しんでくれるなんて思わなかったわ。ありがとう。思えば誰も歓迎なんてしてくれなかったのにあんただけはずっと私を受け入れてくれていたわね。」
「…だって、瑠璃さん…お姉さんみたいで、優しいし、話しやすいんですもん…。」
ほの花は天元の今の婚約者。
私は天元の元許嫁。
相容れるような仲には普通ならばならない。
一悶着あったのにほの花は私に対する態度は一度も変えたことはない。
変わったのは私だ。
もう前みたいな罵詈雑言など出てこない。どうやって言っていたのか最早思い出すこともできない。
少しだけ心を許せば、風のように入って来て、あっという間に太陽みたいに私を照らしてくれたほの花。
勝者か敗者か聞かれたら私は敗者なのに、此処が居心地が良かったのは間違いなくほの花のおかげだった。
しかし、此処に来たのは天元を取り戻すため。
出来ないと分かった今、此処にダラダラいても何の意味もないし、一度はケジメをつけなければいけない。
別に天元の父親の命で来たわけでもないし、私は勝手に此処に来た。
忍一族として生きてきたけど、いざ外の世界に出てみれば広がる世界に心が躍った。
だからもう里には戻らない。
親不孝者だと言われるかもしれない。
それでもちゃんと真っ当に生きて、自分で生活できるようになったらまた此処に遊びに来ようと思った。
先日、ほの花のおかげで真っ当に生きることが出来たと言っていたあの人たちの気持ちが物凄く理解できる。
敵に塩を送り続けるようなほの花を誰が恨めるか。この子が姉のように慕ってくれるというならば本当の姉になりたいとも思えた。
そう思えるようになったのは間違いなく、目の前で泣きそうな顔をしているこの子のおかげ。
「…出来の悪い妹を持つと大変よ。次来るまでには化粧をサボったら許さないわ。」
「本当にまた来てくれますか?」
「来るわ。約束する。」
そう言って小指を出せば嬉しそうにほの花も小指を出して絡ませてきた。
始まりは敵。
でも、今は出来の悪くて馬鹿な…妹。