第31章 忍び寄る終焉※
「酷ェ顔だなァ?何だよ、ほの花とやり合ったンかァ?」
「ヤり合いたかったわ。クソ…女に邪魔されて派手に不満だっつーの。」
「そっちのヤるじゃねぇわァ!!ったくよォ!いつだったかテメェらが盛ってるとこに出くわしちまったからわざわざ呼びつけたっつーのに惚気かよォ?」
「惚気が聞きたきゃ聞かせてやる…。アイツ、この前の夜よ…。」
「俺が悪かったァ、黙れ。」
コイツは本当に口を開けば「ほの花がどうした」「ほの花がクソ可愛いだ」そればかりだ。
今回はどうやら不満が溜まった様子で来たが、喧嘩したわけでないらしい。
そんな話をするために呼び寄せたわけではないので、乱暴に茶を出すと目の前に座った。
「で?任務相談って何だよ。」
「おー、ほの花を医療班として借りてェ。人手不足でよ。医療班としてなら不満はねぇんだろ?」
コイツがほの花を任務に出すのを躊躇しているのは知っている。
怪我をさせたくないのは分かるが、いつまでもそういうわけにはいかない。
自分に来た任務にほの花を同行させるという任務は悉く断って一人で行ってることはいつだったか聞いたことがあるが、コイツの徹底ぶりには驚きしかない。
しかし、医療班としてなら快く送り出すというので念のため頼んでみることにした。
ここ最近、隊士が足りなくて医療班も軒並み減っているせいで怪我人の治療もままならないのだ。
目の前にいるコイツとて柱だ。
鬼殺隊のためにならないことはしないだろうと踏んでいたが、案の定な答えが返ってきた。
「あー…まぁ、な。それならいいけど、アイツはまだ長期休暇中だぞ?」
「お館様に確認して、ほの花とお前がよけりゃ後で繰り越して取ってもらうように伝えてくれって言われたァ。だから呼んだ。」
そう。いま、ほの花は刀鍛冶の里での功労者としてその分の休暇を遅れて取っている状態。
"今"困っているとしても簡単には受け入れられないだろうと思ったので、先回りしてお館様ご相談に上がった。
お館様も最初、困ったような顔をしていたが、"二人が良いというなら"ということと"繰り越して後で休みを取ること"を条件に了承してくれた次第だ。