第30章 "初めて"をください※
──じゅぷ、じゅぽ…
男根を舐めている音が布団の中に響いて厭らしい気分になってしまう。
いつもは此れが今から挿れられると思い、高揚感に襲われるが、今日は違う。
月のモノなのだから挿入することは叶わないし、この悶々とした気持ちは行き場を失い、発散されることもないのだ。
そう考えると残念に思ってしまうのも、宇髄さんにきっちり調教されている証拠だ。
ガチガチに硬くなった男根を見ると欲しくなってしまうだなんて痴女みたいだけど、どうせ彼限定なのだからもう気にするのはやめよう。
宇髄さんのことは欲しくてたまらない。
それは隠しようのない事実なのだから。
ツー…と下から上に舌尖で男根を舐め上げると宇髄さんの体がぴくっと動いたので、私の動きも止まる。
(…え、まさか、起きちゃった…?)
自分から初めておいてなんだが、この状況を見られるのだけは嫌だ。
終わった状態で起きてほしい。
痴女と思われてもいいとは思ったけども、流石に寝込み襲われて恋人に口淫されているなんてどう考えても痴女の所業。
下手したら引かれてしまう。
私はただきっと溜まってるだろうから出してあげよう…と思っただけなのだ。どっちみちまぐわいに縺れ込むわけでもないし、寝込み襲っていたとしても許される…?
いや、でも…この状況を見られたら恥ずか死ぬ。
急に迷いが生じてしまい、布団の中で彼の屹立を握りしめたまま固まっていると、掠れた低い声が布団越しに聴こえて来た。
「…何だよ、もう終わりか?」
それは間違いなく宇髄さんのもので、その発言でも分かるようにいつから気づいていたかはわからないが、私のこの行動を関知していたということだ。
(…終わった…。)
布団の中から出ることもできず、それを握りしめたまま途方に暮れていると勢いよく布団が剥ぎ取られた。
そこにいたのは肩肘をついて私を見ている宇髄さんで、夜着は肌蹴てしまっているが息苦しい布団の中から出られたことで新鮮な空気に大きな深呼吸をした。
ニヤニヤとした顔で見下ろしてくる彼は頗る楽しそうで怒っていないことは明白だけど、蛇に睨まれたかのように一歩も動けない私は呼吸をすることしかできなかった。