第6章 君思ふ、それは必然
宇髄さんから頂いた地図通りに歩みを進めると、たどり着いたそこは小間物屋。てっきり宇髄さんが使うものを頼んだかと思いきや、そこは女性物の化粧品や雑貨などを扱う店であり、どう考えても宇髄さんの物を注文していたというには場違いだ。
そこから想像するに恐らく奥様たちの贈り物でも注文してあったのだろう。少し考えてみれば納得できることなのに、急速に気分は沈んでいくのがわかる。
この気分が沈む現象を何とかしてくれないだろうか。自分で自分の心にそう懇願してみても簡単には切り替えることができないのが人間の性というもので、暫くお店の前でぼーっと立ち尽くしてしまう。
「…ほの花様?入らないのですか?」
「あ、は、入る入る!な、なんだ!宇髄さんったら奥様たちの贈り物を頼んだんだね!自分の物かと思い込んでたからちょっと驚いちゃったよ。」
ド派手な外見をしている師匠なのだから自分の物かもしれないとまだ仄かな期待を抱いてはいるが、正宗たちを外で待たせると意気込んで入店してみるとその期待はすぐに打ち砕かれた。
店内は若い女性が数名商品を見ていて、手前に店主である男性が椅子に座っている。「いらっしゃい」と声をかけられたのでその男性に向き合った。
「あの、すみません…。神楽…じゃなくて、宇髄という人に頼まれて参りました。」
「ああ!宇髄さんね!ちょっとお待ちください。」
注文していた品は店の奥にあるようで、立ち上がるとゴソゴソと奥の棚を漁り出した。"重いもんじゃねぇ"と言う彼の言葉が甦るが、重いもんではないだろうが、心はズンと重くなっているので、苦言を呈するのであれば"嘘つき"と言いたい。
まぁ、私の八つ当たりではあるが。
「お待たせしました。」と男性が持ってきてくれた小さめの箱は装飾があしらってあり、随分と上等な品だとそれだけで分かってしまい、それもまた私の気分を下げる一因となっていく。