第30章 "初めて"をください※
「もう少し寝てろよ」と言う宇髄さんに促されるがまま布団に逆戻りすると、今度は彼の温もりですぐに眠りについたかと思うと朝方まで爆睡してしてしまっていた。
目が覚めたら真っ暗だけど、後ろから抱きしめてくれている宇髄さんの存在に放心状態ながらも幸せを感じていた。
人間の目というのはよく出来たもので、真っ暗の中でも時間が経つと慣れてきてあたりが見渡せるようになる。
壁にかけられている時計を見るとまだ5時前だ。
もう少ししたら日の出の時間だろう。
頭の上からは宇髄さんの寝息が聴こえてくる。
彼より私の方が早くに起きているなんてなかなかない。首を極限まで動かして顔を見れば美丈夫な寝顔が飛び込んできて顔がにやけてしまう。
宇髄さんに抱きしめられて寝るのはいつものことだが、腕枕をしてくれているのは手が痺れないか心配だ。筋肉隆々だから多少の頭の重さなどでは大したことないのかもしれないが。
しかしながら、流石に寝過ぎて眠れない。
真っ直ぐに壁を見つめていても眠くなる気配もないので、どうしたものか…と頭を悩ませる。
このままだと何にも面白くない。
彼なんてずっと眺めていたところでつまらないけど、腕から抜け出したら後から宇髄さんに怒られるかもしれない。
すっかり月経痛は無くなっていて、元気が有り余ってる私は静かに体の向きを変えると宇髄さんと正面から向き合った。
そうすれば目の前にご尊顔が目に入り、退屈しない。
いつも格好いい彼だけど、寝顔は少しあどけなくて可愛い。あんまりベタベタ触ると起きてしまうかもしれないけど、眠る前に割と濃厚な口づけをされたことを思い出してしまうと目に入ってくるのは唇だ。
男の人の割にはぷるんぷるんの其れを見つめると変な気分になって来てしまった。毎回濃厚な口づけをされてどろどろになるまで愛されるけど、いつも私はなされるがままで自分からすることは無いし、上手に出来ない。
どうやらまだ眠りが深いようだし、少しだけ練習させてもらおうかな…?
動かすと起きてしまうかもしれないと思い、足で少し上に上がると目の前まで来た彼の唇に触れるだけの口づけを落とした。