第30章 "初めて"をください※
見上げるそれは不安げに揺れていて、思わずそのまま口付けた。
吸い寄せられるように口付けてしまったが、ほの花は今、月のモノの真っ只中。
濃厚なものをしてしまえば、後悔するのは自分の方だ。
それなのに一度口付けてしまうと何度も何度も口付けたくなってしまうのは、俺がそれほどまでにほの花に溺れているからで、後頭部を支えて甘い唇に酔いしれた。
「…んっ…。」
ちゅ、ちゅぱ…とぷるんとした果実のようなそれを喰み、己の其れを押し付け、ペロッと舐めれば、ピクっと反応する姿が可愛い。
しかし、これ以上すれば止まらなくなってしまう。己の肉棒が反応しかけたところで潔く唇を離した。
「…悪ぃな。止まらんかった。ほの花に他に嫌いな物がねぇか聞きに行ってたんだ。知らなかったとは言え、さっき怖がらせたのは事実だからな。」
「え…?!わ、わざわざ?!ご、ごめんね。大丈夫だから!!そんな気にしてもらわなくても…」
「他の女なら気にしねぇけどよ。婚約者のことを気にしねぇわけにはいかないだろ?で、ちゃんと教えてもらったからよ。」
「………な、なんて…?」
耳まで真っ赤にして下を向いてしまったほの花にどうやら怖い物の正体を俺が知ってることが恥ずかしいらしい。
しかしながら、本当に勇猛果敢に鬼と対峙するというのに怖いものというのが、か弱き女子や子どもと同じなんて意外だ。
雛鶴たちですら驚くだろう。
「ん?おばけだろ?」
「……う…、え、…あ、あの…。」
「何だよ?」
「ほ、他の人に言わないでね…?」
目を彷徨わせながら必死にそう懇願するので余程恥ずかしいようだ。
まぁ、確かに成人した大人が怖がるようなものではないし、いくらほの花がふわふわとした可愛い女子だとしてもその答えに行き着くことは珍しいと思う。
そんな弱点を共有することを許されたのかと思うとそれだけで嬉しい。
「ああ。それは言わねぇよ。心配すんなって。あ、でも蝉の件は言っておけよ?庭に入ってきた時、お前怖ェだろ?雛鶴たちは大丈夫だからよ。助けてもらえ。」
「…うん…。でも、恥ずかしいぃぃ…!情けない…!!」
「そうか?俺的にはクソ可愛いけど?」
俺の発言が信じられないと言った顔をしているが当然だろ。弱点があっても頼りにされれば嬉しいものなのだ。