第30章 "初めて"をください※
余程、蝉が怖かったのか明らかに気落ちした様子で家に帰ってくると、月のモノの腹痛があるようだったので、布団を敷いてやった。
「寝るほどでもない」とは言っていたが、月経痛なんて男には分からないし、一度それで倒れたこともあるからこちらは気が気でない。
あの時は、任務の最中に月のモノになって、酷い発熱まで引き起こして大変だった。
それ以来、月のモノで発熱なんて一度もしていない。あの時は確かに冷たい雨に濡れて風邪もひいたせいもあるとは言っていたが、何故解熱剤を飲んでも治らなかったのか…。たまに思い出すと不思議でたまらない。
まぁ、考えたところで医療の知識がない俺は何の答えも導き出すことはできやしないのだから結局は考える"だけ"に止まっている。
布団に寝かせてやり、眠りについたのを確認すると部屋を出た。
そばについていてやろうかと思ったが、聞きたいことがあったので、お目当ての人物を探すために屋敷の中を彷徨く。
四人も住人が増えたが、馬鹿みたいにデカい屋敷を構えていたことで事足りないことはない。
しかし、人を探すのも一苦労だ。
炊事場から
風呂から
それぞれの部屋
居間
厠まで探し終えたところで、庭に出るとお目当ての人物たちが木の剪定をしていた。
「此処にいたのか。」
「あれ、宇髄様。もうお帰りでしたか。」
「ああ、ほの花が月のモノがきちまって、腹痛で寝てんだわ。」
「ああ、そうなんですね。ありがとうございます。」
すっかり俺たちの生活に溶け込んでいる正宗達は、俺にとってのほの花の情報源だ。
何か困ったことがあればこいつらに聞けば大抵のことは分かる。
気のいい奴らだから飲み友達のようなモノでもある。
「なぁ、アイツって蝉嫌いなの?」
「え、……あ、ああ!そうですそうです!口に出すのも嫌だと言って、禁句にされてたのでうっかり忘れてました。」
「そんなに?!何かトラウマでもあんのかよ。」
そうやって、思いきって聞いてみれば苦笑いを浮かべながらもポツリポツリと話してくれた。
しかし、その内容に俺は腑が煮え繰り返るほどの怒りが込み上げたが、今となってはどうすることもできないことに途方に暮れるしかなかった。