第30章 "初めて"をください※
這って帰るからいいと啖呵を切って、不貞腐れてしまったほの花の機嫌を直すべく前に屈んでみたが、目線はすぐに逸らされてしまう。
「おーい、ほの花〜?ほの花ちゃん?悪かったって。笑いすぎたよな?許して〜?」
「やだもん…。天元、酷いもん…。」
子どものように頬を膨らませて抗議の意を表すほの花がまた可愛くてニヤニヤしながら見ていたが、やはりこう言う時は親身になって本気で謝るべきなのだ。
あまりに可愛くてつい揶揄ってしまったが、まさか自分の身に思いも寄らぬ仕置きが降りかかってくるなんて考えもしなかった。
「そんなこと言わねぇでさ…?な?ほの花。許してくれよ。」
手を持ってゆらゆらと揺らしながら目線を絡ませればいつものごとく絆されるのだが、今日は彼女からまろび出たお仕置きとも取れる言葉に目を見開く羽目になった。
「…一週間、シないなら許してあげる…。」
「……は?シない?シないって…シない?!まさかまぐわいのことじゃねぇよな?!まぐわいは夜するよな?!」
「シない!!怒ったんだから!だから一週間なし!!」
どんな拷問なのだ。
これぞ絶望だ。
いくら怒ったと言っても冗談だよな?そうだ、冗談に決まってる。
「…ほの花、じょ、冗談だよな?」
「冗談じゃないもん。」
「な、ちょ、ちょっと待て!俺は部屋の中に蝉を解き放ったわけでも、嫌がるお前に蝉をくっつけたわけでもねぇだろ?!いくらなんでも罰が惨すぎるだろ?!」
「そ、そ、そ、そんなことしたらいくら天元だって許さないんだから!!!もうお嫁さんにならない!!」
おいおいおい、そこまでなのか?
そこまで蝉が嫌いなら最初から教えておいてくれよ。
まぐわえねぇなんて俺の一日の楽しみなのに…。
「…お、落ち着いて話し合おう。悪かった。俺が悪かったから。」
「無理。一週間シない!と言うかできない!」
「何でだよ?!」
「月のモノが始まりそうなの!お腹痛くなってきたんだもん!もう帰る!!」
ああ…そういうことか。
って、それは説得してもできねぇやつじゃねぇかよ…!
怒り狂ってまぐわいを断ってきただけでないと知ればホッとする一方、余計に絶望する羽目になった。