第6章 君思ふ、それは必然
最近の宇髄さんの距離の近さには困っていたと言うのに昨日は一日中ぼーっとしていたがそっとしておいてくれていた。
本当のことを言うと、声をかけてくれたなら言ってしまおうかな…と思っていた。
ここに来て以来、宇髄さんの温もりにどれだけ救われてきたか。
今回も同じように甘えてしまおうか…と思っていた自分が馬鹿だった。
それならば、彼が大丈夫か?と言ってくれた時に何故言わなかったのだ。
いつも受け身で宇髄さんが声をかけてくれるから安心しきっていたが、自分から言わなければ分からないこともある。
しかし、今日は家にいてもまた同じように宇髄さんに期待してしまうだけだし、カナヲちゃんに会いに行こうと思っていた。
部屋で着替えを済ませると見つからないように襖をそぅっと閉めたのに「おー、ほの花!ちょうど良かった。」と満面の笑みの宇髄さんに捕まってしまった。
「え、う、宇髄さん、何か?」
「出かけんのか?」
「は、はい。カナヲちゃんのところに行こうかと…。」
「そうか。それならついでにおつかいに行ってきてくれねぇか?」
お、お遣い?
いや、たまにある。雛鶴さんに頼まれたり、まきをさんに頼まれたり、須磨さんに頼まれたり…。
でも、宇髄さんに頼まれたことはなかったので少し驚いた。
「あ、は、はい!分かりました!しのぶさんに御用ですか?」
「は?あー、違う違う。胡蝶の家にお遣いじゃなくて、町に行って欲しいんだ。」
「え…、ま、町…ですか?」
「ん?都合悪ぃ、わけねぇか。カナヲんとこ行くだけだもんな?ほの花。」
そう。都合悪いというのはこちらの勝手で宇髄さんは関係ない。
私が今日町に行きたくない理由なんて宇髄さんからしたらどうでもいい話。
でも、まさか町に行ってくれなんて今まで一度もなかったことで、よりにもよって今日なのか…と自分の運のなさを呪うしかない。