第30章 "初めて"をください※
訓練が終わるとみんなでぞろぞろと病室に戻るのを後ろからついていく。
すると、アオイちゃんが振り返って満面の笑みを向ける。
「ほの花ちゃんもお昼ごはん食べていくでしょ?」
「え?!いいの?食べたい!!」
「うん。分かったわ!じゃあ待っててね。」
そんなつもりなかったけど、アオイちゃんの申し出に顔がにやけるのを止められない。
既にお腹がぺこぺこで、食べ物の話をすれば胃がキュッと縮んだ気がした。
「ねぇ、ほの花。音柱の鍛練はこういうのじゃなかったの?」
前から聞こえた声は炭治郎で歩きながら後ろを振り向いて首を傾げている。
「あ、うん。宇髄さんとはこういう鍛錬はしてないかなぁ。体力増強、筋力増強、あとは受け身の取り方…とか?主に実戦で戦ったときに必要なものを鍛錬で養っていた感じかな」
「うわぁ…、き、キツそうだね…。」
「キツいよぉお…!めちゃくちゃつらかったけど、ちょっと慣れてきた!それに相手が音柱様だから毎日十二鬼月と対峙してる気分!だからそういう意味でもありがたいかも。」
そう、宇髄さんは音柱と言われるだけあって物凄く強いし、ひとたび鍛錬となればまだ全然ついていけない。
一緒の任務になった時には足手纏いにならないか不安なくらい。
「うわぁ…。あ、あんなおっかない鬼と毎日毎日鍛錬してるなんて凄すぎるよぉお。ほの花、怖くないの?殺されちゃうよぉおおお。」
「え、いや…み、味方だから怖くないよ。師匠だよ?殺されないよ。あはは!」
「そうだよ、善逸。音柱ってほの花の恋人なんでしょ?殺すなんてするわけないじゃん。」
善逸は今回の任務で余程鬼に恐怖を抱いたのだろうか?震えながら悲鳴をあげるが、炭治郎の言う通り宇髄さんは私に鍛錬中でも優しい。
休憩中には必要あるのか?と思う抱擁をされるし、水分補給を口移しでしてこようとしたときは流石に止めた。
要するに宇髄さんは私に甘々なのだ。
もう少しくらい厳しくしてくれてもいいのだが、彼から「もうお前に厳しくするのは無理」と言われてしまっている。
鍛練の内容自体はキツイものだが、その後の甘やかしがそれを凌駕するので最早鍛練なのかわからなくなってきた。