第30章 "初めて"をください※
「お前が謝れ!お前らが詫びろぉぉおっ!!天国にいたのに地獄にいたような顔してんじゃねぇえええええ!」
蝶屋敷に着くと例によって例の如く、"女の子に賛辞を言わずにいられない病"の善逸の声が聴こえてきて、私はそちらに足を向けた。
病室にいなかったのでもう回復機能訓練に向かっているのだろうと思い、探していたのだが…
すぐ見つかった。
「女の子とキャッキャキャッキャしてただけのくせに何やつれた顔見せてんだよ、土下座して謝れよ!切腹しろ!」
「何てこと言うんだ!」
見たところ…うーん。
善逸が一方的に怒って…炭治郎と伊之助に絡んでる…?
何とか応戦しようと試みる炭治郎だが、たじたじ具合は変わらない。
「黙れこの堅物デコ真面目が!!黙って聞け!いいか?!女の子に触れるんだぞ?!体揉んでもらえて!!湯呑みで遊んでる時は手を!!鬼ごっこの時は体を触れるだろうがァァっ!!女の子一人につきおっぱい二つ、お尻二つ、太もも二つついてんだよ!すれ違えばいい匂いがするし、見てるだけでも楽しいじゃろがい!!」
あ、うん…。
宇髄さん。私間違ってないと思う。
多分、善逸は病気だ。
だけど、病名を訂正するね。"女の子に賛辞を言わずにいられない病"ではなくて、"女の子に異常に固執している病"でした。
血走った目で炭治郎達を睨みつけながらも、発せられる言葉の数々をよくもまぁ噛まずに言えるものだ。
此処まで来ると女の子に対する執念を感じる。
「幸せ!うわぁーー!幸せ!!」と妄想しながら飛び上がるその様を見たら、流石の宇髄さんも私が彼と浮気をするだなんて思わないだろう。
できればこの場所で彼を一緒に見ていたかった。
隣にいた伊之助が「わけわかんねーこと言ってんじゃネーヨ!」と苦言を呈したことで今度は善逸と伊之助の口論が始まってしまったことで、声をかける機会を見失った私はどうしたもんか…とその場で立ち尽くしていた。
しかし、隠れてその場にいたところを匂いで気付かれたようで数秒後に炭治郎が「ほの花?」と覗きにきてくれたことで、ようやく顔を出すことができた。