第30章 "初めて"をください※
襖を勢いよく開けたのは元許嫁の瑠璃で、今や俺よりも派手にほの花の味方だ。
腕の中でもがいている俺の女を見て厳しい視線を向けてくる。
「天元…離しなさいね?朝から盛ってんじゃないわよ。」
「はぁ?!俺の女だからいつ何処で抱いてもいいだろうが!!」
「よくない。どうせ昨日だって抱き潰したんでしょーが!首にどれだけ痕つけてんのよ!この絶倫男が!!」
あまりに当たり前のように付いていたそれにほの花ですらハッとして今更首を隠す始末。あまり付けるなと元嫁達に言われていたことも思い出したのはこの時。
顔を引き攣らせてももう既に遅い。
「あー、こ、これは…、む、無意識だ!仕方ねぇだろ?!付けちまったもんは!」
「隠してあげるからほの花貸しなさい。そのまま布団に押し倒そうとしてんなら今日の夜からこっちの部屋で寝かせるわよ。」
ほの花と違い、瑠璃を言い包めるためには一筋縄ではいかない。下手したらこちらが負ける。
しかも、さらに追い打ちをかけるかのようにほの花が上目遣いで見上げてくるものだから押し倒してやろうと思った気持ちはどんどん揺らいでいく。結局、最強なのはほの花だ。
この顔で見つめられちまえば負けも同然。お手上げだ。
「わぁーったって…。しゃーねぇな。ほら、消してもらってこい。蝶屋敷行くんなら迎えに行くから其処で待ってろ。分かったな?」
「う、うん!分かった!ありがとう!」
ほの花の体を離して瑠璃の元に渡せば、すかさず髪の毛を上げて頸を確認される。
はいはい、其処にも付けた記憶があります。
「…こういうところに付けないでもらえるかしら?」
「俺の女だからいいんだわ。」
「ほの花、今日の夜から私の部屋で寝なさいね?」
「あーーー!どーもスイマセンシタ!!」
何故俺が下手に出ないといけないのだ。
ほの花とまぐわうのに理性なんて残っちゃいない。無我夢中で愛してるのに何処に所有印を残したかどうかなんて正直覚えちゃいない。
瑠璃に言われるまで朧げな記憶を思い出すのに必死だと言うのに。
ほの花がいなくなったことですっかり手持ち無沙汰になった俺は両手を彷徨わせた。