第30章 "初めて"をください※
翌日の朝、目が覚めると宇髄さんの腕がからみついていた。
そんなことはよくあることなのだが、遠方の任務から帰ってきたばかりなのでその感覚も少し久しぶりに感じた。
昨日は結局、浴衣姿の彼をずっと見つめていて昼間にまぐわえなかったことで、夜は記憶が無くなるほど抱かれた。
少し体を動かすだけで腰も…、膣も痛い。
チラッと宇髄さんの顔をみれば、珍しくまだ寝ているのか目を閉じていた。
こうやって見ると本当に綺麗な顔をしているなぁ。まじまじと見つめながら頬に手を添えてみると、パシッとその手を掴まれて宇髄さんと目が合った。
「…寝込み襲ってくれんの?」
「ち、違うよぉ…!綺麗な顔だなって思っただけ!」
「そっくりそのまま返す。んー…、まだ4時じゃん。もう少し寝ようぜ。ねみー…。」
「う、うん。起こしてごめんね。」
そうやって彼の胸に顔を埋めて二度寝を決め込もうとしたのに、頭の上から降ってきた声に再び顔を上げる。
「…今日もアイツらんとこ行くのか?」
「え、…?あ、炭治郎達のところ?駄目なら行かないよ。此処にいる。」
宇髄さんは本当は行ってほしくないのだろうか?やたらと気にしていそうなので念のため確認をしてみる。
「…駄目じゃねぇよ。浮気しねぇんなら。」
「しないよぉ〜!当たり前じゃん!回復機能訓練って言うのをやってるみたいだからちょっとどんなのか気になってたの。行ってきてもいい?」
「回復機能訓練?あー…怪我してたからか。おー、見てこい。浮気しねぇんなら。」
どれだけ私のことを浮気しそうだと思っているのだろうか。じろりと宇髄さんを見つめても目を瞑ったまま頭を撫でられるだけ。こちらは不満ばかりが貯まると言うのに。
「…私、浮気しないもん。」
「そうだな。俺のことが大好きだもんな?」
「狡い、分かってるくせに。」
「ごめんごめん。派手に美人な恋人を心配すんのは仕方ねぇだろ?」
「私、そこまで美人じゃないからあんまり外でそう言うこと言わないでね?恥かくよ。」
「……恥かかねぇわ。」
好きだと二割り増しくらいだと良く見える物だ。
宇髄さんがどこでもいつでも私のことを褒め称えるのは恥ずかしいのに一向に止める気配がないのは困りものだ。
二人だけならば嬉しいのだから強く言えないのもつらいところだ。