第30章 "初めて"をください※
ほの花は情交中は驚くほど色香を漂わせるようになってきたけど、シていなければ生娘だった頃と全く変わらない。
その違いがまた善いのだが、着替えくらいで恥ずかしがっていたらこれから先どうするつもりなのだろうか。
俺は本当ならば一緒に風呂も入りたいし、許されるならば着替えも手伝ってやりたいし、手伝って欲しいくらいだ。
だが、そんなことは許されるわけもなく、こうやって着替える時は顔を真っ赤にして後ろを向いているか、外に出ていってしまう。
それも慣れたものだが、俺とて希望はあるのだ。
仕方なくほの花に貰った浴衣を広げてみると縦縞しじら模様が品良くお披露目された。
新品独特の匂いが他の男に渡していないと言う証拠だ。
確かにほの花はお洒落に興味はないが、別にダサいわけではない。着ている物も品が良いし、彼女の性格を表しているように優しく穏やかだ。
ただ俺が派手好きだということで不安になったのかもしれないが、ほの花の見立てが変だと思ったことは一度もない。
まぁ、これ以上綺麗な着物着られて男が集るのも困りモンだし、このままで良い。
ただでさえ、この前コイツ用に仕立てた浴衣は俺が選んだせいでいつもより華やかでクソ可愛かったことを思い出した。
もったいないとか言って、花火大会まで着ないと言って聞かないのだが、当日雨でも降ったらどうするつもりなのだろうか。
もっとたくさん着て欲しいものだ。
広げたそれに袖を通すと真新しいそれはピンと張っていて少し硬さを感じるが、大きさはピッタリだった。
恐らくは呉服屋の女将に頼んだのだろう。
合いそうな帯も添えられていてそれを腰に巻けば、思った通りほの花に抱き締められているような穏やかな色合いに何だかくすぐったく感じる。
でも、凄く良い。
「ほの花〜?どう?どう?」
小さくなって蹲っているほの花に後ろから声をかければ恐る恐る振り返ってこちらを見た彼女が勢いよく立ち上がると目を見開いて、真っ赤な顔をして涙目になった。
思わずギョッとして狼狽えたが、泣きそうになりながら俺を見て、小さな声で「すっごく格好いい…」と言う物だから可愛くてたまらなかった。