第30章 "初めて"をください※
先ほどまで鼻息荒めに手を握りしめて話してきたというのに今度はぽけーっとして私の"音"を聴いているような善逸。
「…音?善逸、耳が良いんだね?そんなこと言われたの初めてだよ。」
「そうなんだ。俺、凄い耳がよくてさ!だけど、不快な音まで聴こえて来ちゃうからそれが気持ち悪かったりするけど、ほの花は最初から全然そんなことないし、すごい心地良いんだ。や、や、やっぱり結婚!?ああああっ!!運命なんだね!?やっぱりそうなんどね?!」
「…あ、あはは…。」
話し始めは普通だったのに…いや、むしろ後半が善逸の普通なのかもしれない。
いつもの調子を取り戻した善逸を横目に薬の調合を終えると今飲んでる物と混ぜて彼に手渡した。
「少し苦味成分だけ減らしたけど、苦いのは苦いと思う。ごめんね?」
「アアアアッ!俺のためだけに薬を作ってくれるなんてほの花の愛には感服だよ!最高だよ!ありがとうありがとう!!愛してるよ、ほの花ーー!!!花嫁衣装は上等な物を作ってあげるからねェエエエエッッ!?」
「そんなこと宇髄さんにバレたら殺されますよ。善逸くん。」
「し、しのぶさん…!」
いつの間にかこちらに顔を向けて笑っているしのぶさんの姿に顔を引き攣らせたが、善逸はわけが分からないと言った顔をしてキョトンとしている。
「ほの花さんは音柱の宇髄さんの大切な恋人なので手を出したりしたら殺されますよ。気をつけて下さいね?」
「え……え、は?………ェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?!?!?何だってェエエエエッ?!?!」
「煩いです。静かにして下さいね。薬を増やしますよ。」
あまりに大きな叫び声に驚いて耳を塞いで後退りをしてしまった。
しかしながら、そんな普通にしのぶさんにバラされるとは思ってもいなくて、まだ状況が飲み込めずにいる。
「ああ!やっぱりそうだったんだ!!何となくそうかなぁ?って思ってたよ!音柱って人、ほの花にだけ凄い甘い匂いを向けてたし!」
「あ、甘い、匂い?」
善逸に引き続き、炭治郎は鼻が効くようで常人ならば感じるはずのない匂いに言及してくるので二の句が告げずにポカンとしてしまった。