第30章 "初めて"をください※
善逸が騒ぎまくって、ほの花の笑顔に鼻血を噴き出してしまったと言うのに、冷静に鼻血の処置をするほの花はさすが医療者だ。
手拭いを手に善逸の鼻を摘みながら「大丈夫?」と至近距離で心配そうに見つめているが、顔を真っ赤にして涙目になってる友人を見るとそれが逆効果だろうと顔を引き攣らせた。
ほの花はいつも優しい花の匂いがする。初めて出会った時も、最終選別という緊張感の中、春の暖かな陽射しの中にある花畑のような香りがした。
それは今も変わらなくて、鬼殺隊という任務に就いているというのにこの穏やかな空気感と独特の花の香りは何なのだろうか。
少し普通の人間と違う感じがするんだ。
いや、人間なんだけど…。
嫌な感じではないし、味方なのは間違いない。
でも、備わっている何かが普通の人間と違うからこんなに異質なように感じるのかな。
一体その異質に感じる正体が何なのか?分からないまま聞かずに来たけど、今なら聞けるかもしれない。
そう思ってほの花に声をかけようとした時、病室に入ってきた男の人に意識を持っていかれた。
「よっ!」
「村田さん!!」
お見舞いに来てくれたのは任務を共にした村田さんでお互い無事だったことを心から喜び合ったのだが…。
「あれ?村田さん、お久しぶりです。」
「神楽さん?!どうしたの?こんなところで!」
どうやらほの花とも知り合いのようで、にこやかな顔を村田さんに向けている。
そんな彼女の態度を気に入らなさそうな善逸が村田さんを睨みつけているけど、誰も気にもとめていない。
「私、炭治郎達と同期なんですよ〜。久しぶりに会ったからお見舞いと善逸の薬の調合に来たんです。」
そう言うと本来の目的である薬の調合を始めたほの花が、再び善逸に向き合ったことで物凄くにやけたアイツが目に入る。
確かにほの花は美人だし、性格も可愛らしいんだけど、あの派手な柱の人から物凄く嫉妬の感情を感じたから…。そういう仲なんじゃないかな?
善逸がいくら熱を上げてもほの花からは全く恋の匂いは感じられないのだから。