第30章 "初めて"をください※
瑠璃さんはきっと私のことを誤解してはいないと思う。はっきりと目をみて"あんたに不義はできない"と言ってくれたし、わたし相手にお世辞を言う必要もないからだ。
折角だから善逸の薬の調合も少し変えてあげようと思い、部屋から薬箱を持ってくると蝶屋敷に向かった。
宇髄さんはきっと炭治郎のことを鬼殺隊士として認めていないと言うわけではないと思う。
他の柱の人と比べて、鬼との悲しい過去はない筈だし、彼のことに辛辣な態度を取るのは鬼殺隊の柱としての責任だ。
責任感も強いし、産屋敷様への忠誠心も強い。
だから隊律違反をしている炭治郎を厳しく罰することが必要だと思ったからあそこまで厳しい視線を向けていたのだろう。
産屋敷様の意向なのか、鬼殺隊として認めてもらえたのであればそれ以上そのことを蒸し返すようなことはしないだろう。
きっと怒るとしたら、炭治郎と割と仲良しだからと言うところが一番強い気がする。
同期だし、物凄く性格の良い子だから話していても裏がなくて話しやすい。
善逸は何だかぶっ飛んでて面白いし、伊之助はまだよくわからないけど猪の被り物しててそれだけで存在感が凄い。
しかしながら、折角仲良くなったのだから、同期として親睦を深めたいと宇髄さんに確認を取れば高確率で却下されるに違いない。
ふたば屋さんでみたらし団子をたくさん買ってから蝶屋敷に到着すると、アオイちゃんが出迎えてくれた。
「あら、ほの花ちゃん!どうしたの?」
「今日、宇髄さんが任務でいなくて暇だから遊びに来ちゃった。カナヲちゃんもいるー?」
「いるわよ。」と言うアオイちゃんに手土産を渡すと、先に炭治郎達のお見舞いに行こうと思い直す。
女子のおしゃべりは始まると長いのだ。
「その前に炭治郎達のお見舞いに行ってくるね。」
「分かったわ!終わったら声かけて?おしゃべりしましょ?」
アオイちゃんに見送られながら、彼らが入院している部屋に足を向けた。
炭治郎達に会うのは一週間ぶりだ。
身体が治ってきていると良いのだが。
ここで出されているのはわたしが作った薬が殆ど。
会うのも楽しみだが、薬の効果を確認するのも少し楽しみなのは職業柄仕方ないことだ。