第29章 停戦協定※
「良かったじゃない。可愛い可愛いほの花を外で守ってくれる下っ端ができて。」
「な、る、瑠璃さん?!」
「その前に既に絡まれてたんだろ?全く…。」
「ち、違!!それは…、私じゃなくて!」
あたふたと状況を説明しようとしているほの花だが、言い訳をしようとしているようにしか見えずにため息を吐く。
しかし、そんなほの花に助け舟を出したのは意外にも須磨で、おずおずと手を上げて「天元様」と声をかけてきた。
「あのぉ…、今日のは私が絡まれてたのをほの花さんが助けてくれたんですー。だから怒らないであげてください〜!」
「へぇ…?」
まぁ、これだけ美人揃いで歩いてりゃ誰が声をかけられてもおかしくないとは思うが、そこは重要じゃねぇ。
その場にいたと言うだけでほの花が一役を買っているのは目に見えているのだから。
「危ねぇことすんなよな。刃物持ってたらどうすんだよ。」
「えー?そんなの返り討ちにできるよ。」
「ほの花やめときなさい。天元はあんたしか目に入ってないから何言っても無駄よ。誰が声かけられたとか関係ないのよ。その場にあんたがいたら時既に遅しよ。」
「よく分かってんじゃねぇか。瑠璃、大正解だ。」
変な顔をして抗議の表情を向けるほの花と違い、得意げに鼻を鳴らす瑠璃だが、俺を指差して辛辣な顔を向けてくるのは変わらない。
「はいはい。じゃあ、ほの花連れてくわよ。」
「は?!何で。」
「置いてったらまた部屋でおっ始めるでしょうが。また食事を食べ損ねると可哀想じゃない。部屋で預かるわ。冷静になったら迎えにこれば?」
クソッ…。コイツがいるとほの花と昼間っからヤることもできねぇ。
俺の手をほの花の腰から離させると勝ち誇ったような顔をしてほの花の手を取り部屋を出て行った。
取り残された俺を宥めるのはまたもや正宗達でワナワナと震える俺を必死に気を紛らわせようとしてくる。
「…アイツ…!!ふざけやがって。これじゃ、夜しかヤれねぇだろうが!!!」
「…あ、あはは…(十分では?なんて口が裂けても言えない状況だ)」
俺は小一時間悶々としながら居間で時間が過ぎるのを待ち、結局任務で出かけるまで一度も押し倒すことは叶わなかった。