第29章 停戦協定※
どうやらコイツらがほの花に手を出す心配はなさそうだ。
完全に崇め奉れているのが分かる。
崇拝してるのだろう。
そんなこの男達の様子に笑いを堪えているのは残りの奴らで、ほの花は肩を竦ませたままだ。
「な?俺の女は美人だろ?」
ほの花が恥ずかしさのあまり口を挟んできたので制止して、仕切り直す。
殴り合いの喧嘩をしたことは許せないが、あれに関してはほの花にも非があるのは分かっているし、日も経っているから咎めることもできない。
それならば目に見える形で役に立って貰えばいいだけのこと。
「はい!姐さんはとっても美人です!!お友達も美人でいらっしゃいますね!!」
「おお。そうだろ?だから、コイツらが町にいて男に絡まれてたら助けてやってくれ。ついでに絡んだ男達の身元を割って俺に報告しろ。」
「なるほど!!旦那がトドメを刺すんですね!わかりました!!」
「まぁな。俺が直々に痛ぶってやるから手は出すなよ。」
理解の早い奴らだ。
伊達に高利貸しやってあらゆる悪行に手を染めただけあって…、って!そうじゃねぇ。
危うくコイツらの本当の頭にでもなった気分になっちまった。
一般人相手だと自分の強さ故につい悪の親玉みたいな役回りになりがちだが、鬼相手にならば一般人も守るのだから正義の味方のつもりだ。
「旦那!俺たちが姐さんとご友人をしかとお守りするのでお任せください!」
「あ、ああ。頼んだぞ。じゃあもう帰って良い。」
「そう言えば…先ほど絡んでいた四人組の男はどうしましょう?!」
「……そいつらがまた悪さするようなら身元を調べろ。」
「承知しました!では、失礼します!」
折角もう帰って良いと伝えたのに直前でとんだ爆弾を投下していく奴らだ。
ほの花達の様子を見るに大した奴らでもないのは分かる。深々と頭を下げて客間を出ていくそいつらを雛鶴が玄関まで見送っている。
もちろん隣にいるほの花の腰はがっちり掴んで離さない。
視線を向ければ、瑠璃にやられた化粧でしっかり色香を醸し出す彼女にため息しかない。飛んで火に入る夏の虫だ。
こんなほの花をこれから見なければいけないのだから、過去のことは水に流し、外でコイツを守ってくれる輩が増えたと思えばよかったのかもしれない。