第6章 君思ふ、それは必然
だが、そんなことは大した問題ではないと思っているのは自分だけではなく、前にいる三人も同じ考えだからこそ俺に言ってくれたのだろう。
そこまで分かると"縁談が進まなかった理由"になんとなく察しがついて呆れてずっこけそうになった。
「…は?本気で言ってんの?たったそれだけで…縁談断ってきたっつーこと?」
「…それを昨日、本人から言われたんですよ。久しぶりに会ったほの花様が相変わらずお綺麗だったので、逃した魚は大きかったとでも思ったのでしょう。」
「デカいから断ったってか?配慮のかけらもねェ奴だな。」
それに話を聞いているとほの花は縦寸がデカいことをかなり気にしていたのだろう。俺といればそんなことを考える必要はなかったからきっと悩んでいたことも良いのか悪いのか忘れていたのかもしれないが。
この時ほど自分の体がデカくて良かったと思った日はない。
「…ほの花様もあの方を好いていると言うわけではなかったと思います。ただその時期周りのご友人が悉くご結婚されていっていたのでかなり焦っていらっしゃったのを覚えています。」
「お父上は恐らく理由を本人に言わなかったのだと思います。おおよその検討はついていたとは思いますが…。」
「ああもハッキリ言われてしまうと自分自身を全て否定されたようにも感じて悲しくなりますよ。」
三人の見解は恐らく正解だろう。
その縁談から時間が経っているのにも関わらず傷口に塩を塗りたくられたのだ。ほの花が落ち込むのも頷ける。だがそれだけであそこまで落ち込むだろうか?とも思ったが、まずは自分の頭が沸騰しそうなほど怒りが募っていることを無視できない。
「とりあえず…ソイツを血祭りにあげりゃァいいんだな?…任せておけ、骨も残らねぇくらいにド派手に切り刻んできてやらぁ。」
ゆっくりと立ち上がる俺を見て「ま、待ってください!」「落ち着いてください!」と宥められるが俺の目は完全にすわっていたと思う。
久しぶりにここまでの怒りを感じて、震えが止まらなかったのだから。