第29章 停戦協定※
「姐さんたちをお守り致します!」と言って聞かないので、甘味処まで護衛のように私たちの周りに睨みを利かせている三人に正宗たちですらこんなあからさまな守り方はしないので居心地が悪くて仕方ない。
折角楽しく甘味を食べたくとも外で待機していると言って利かないし、結局早々にお土産を買って家に帰る羽目になった。
既に雛鶴さんたちとは仲良く会話しているが、私はとても楽しく会話できるような気分ではない。
"姐さん"と呼ばれて跪かれるのは居心地が悪いからだ。確かに先程は私が手を下す前に、助けてくれたことで暴力沙汰にならずに済んで助かったが。
あと少しで家だと言うのに、マシな言い訳も思い浮かばない。
言い訳というのには理由がある。
宇髄さんに彼らのことを話したことはあったけど、その時、私に危害を加えようとしたことで物凄く怒り狂っていたからだ。
要するに鴨がネギを背負って自ら訪れるようなもの。
しかもこの場合、彼らを庇おうものなら余計に彼の怒りを助長させるだけな気もする。
「姐さん、足元お気をつけください!小石があります故!」
「えっ、ひゃあっ…!」
「姐さん!!」
考え事をしたまま、ぼーっと歩いていたせいで石に躓いてしまったのは自分の責任だ。
いつの間にか屋敷の塀が目に入ったので、どうやら帰って来てしまったようで、地面に手をつこうとした瞬間、腰を抱きとめてくれた人物がいた。
その腕の感触と匂いで誰なのかはすぐに分かったが、できればもう少し心の準備をしてから会いたかった。
「…おい、これはどう言う状況なのか説明してくれるよな?ほの花。」
「…う、は、はい。」
「姐さんの旦那ですね!お初にお目にかかります!俺たち、姐さんに命を救われた者です!今日から身の回りの安全を保証します!」
「……は?姐さん…?」
いや、わかる。わかるよ。宇髄さん。
突然のことで何が何だか分からないのは十分わかる。
唯一、救われるのは彼の纏った空気感がそこまで怒りのものでなかったことくらい。
説明は面倒だけど、きちんと説明すれば分かってくれるはずだ。
──と思いたい。