第29章 停戦協定※
「姐さん!その節はお世話になりました!!お陰で真っ当な職に就くことができ、礼をしたくて探しておりました!お久しぶりです!!」
「……あ、ああ…!!あの時の?!」
私の後ろで首を傾げる四人をそのままに、漸く少しずつ記憶が甦ってきた。
彼らとの接点は琥太郎君だ。
琥太郎君の家に借金取りで来ていた男たち。
やっと合点がいくとスッキリした私はマジマジと顔を見た。
分からないのも無理はない。
あの時、無精髭を生やして明らかにガラの悪い輩だったというのに、今はちゃんとした着物を纏い、身なりも整えている。
「はい!姐さんがあの時、助けてくれたお陰です!まともな職に就くことができて、ちゃんと家も構えました!」
「た、助けたなんてそんな…。私、少しのお金渡して、喧嘩しただけじゃない。 」
「いやぁ、あんなに強い女性と会ったことがなかったので驚きましたが、俺たち姐さんについて行きます!何なりとお申し付けを!!」
「やめてよーー!姐さんって呼ばないで!恥ずかしいじゃない!!」
私の前に跪いて、首を垂れるその男たちに慌てふためいていると、「ほの花さんのお知り合いですか?」と雛鶴さんが声をかけて来てくれたので事情を説明する。
琥太郎君たちのところに借金取りに来ていたのを私が止めたこと。
その時に致し方なくやっていただろう高利貸しの仕事に足を洗ってまともな仕事について欲しくて、余分にお金を渡した。
でも、手持ちが少なくてそこまで足しになってないはず。
それなのに立ち直ったのは彼らが本当にそうしたいと願っていたからだ。
私はただのきっかけになっただけ。
それなのに配下に加わったかのように振る舞う三人に私は天を見上げてため息を吐いた。
「あら、いいじゃない。ほの花が町を歩くときの護衛でもしてもらえば?それなら天元も安心よ。」
「承知しました!お任せください!旦那にご挨拶に伺います!」
「いやぁっ!ちょ、ちょっと待ってよぉ!!」
いきなり宇髄さんに挨拶にくるっていよいよ舎弟感が出てくる。
悪の組織の親玉でもないのにこの状況に頭を抱えるしかないというのに、四人はとても面白そうに笑っていて肩を落とすしかなかった。