第29章 停戦協定※
呉服屋さんを出ると、甘味を食べてから帰ろうということになり、町へ向かった。
前を歩く四人が目の保養だなぁと思いながら護衛気分で歩いていると、前から四人組の男に人が歩いて来た。
一度通り過ぎたが、前の四人を舐めるように見たので眉間に皺を寄せる。
わかる。わかるよ。
綺麗よね。全員美人なの。
だけど、そんな目で見られると少しばかり気に入らない。舞扇に手をかけながらも彼らの動きを注視していると、一人の男が一番端にいた須磨さんの手を掴んだ。
「わぁッ…!な、何ですかぁ!」
「ねぇ、全員可愛いじゃん。俺たちと遊ばない?」
「ちょっと、須磨を離しなさいよ!」
まきをさんが須磨さんの手を掴んでいる男の手を叩こうとするが、ニヤニヤとした気持ち悪い笑みを浮かべてもう一人の男が前に出た。
騒ぎを起こすのは鬼殺隊として産屋敷様に迷惑がかかるといけないので好ましくない。
でも、こうなってしまっては彼女達を守ることが先決だ。
私は慌てて須磨さんとまきをさんが対峙していた男の人達の前に出て、その手を離させるとその男達を睨みつける。
「やめてください。嫌がってるじゃないですか。」
「へぇ、お姉さんが一人で相手してくれんの?それなら別にいいよ?後ろの四人は諦めるからさ。」
「めっちゃ美人じゃん!楽しめそうだな?おい。」
話をどんどん進めていくその人達に呆れて深いため息が出る。誰が遊びに付き合うと言ったのだろうか。
須磨さんとまきをさんを庇うように後ろに隠すと、雛鶴さんに目配せをした。
すると、察してくれた彼女が二人を連れて後ろに下がってくれた。
これで後ろを気にする必要もないと思って舞扇に手をかけた時、「おい。」とドスの効いた声が響き渡った。
振り向いた先にいたのは、男性三人組。
どこかで見たことあるような…無いような…?
しかし、強面のそれを存分に発揮させて、私の前まで来ると四人組の男を睨みつけた。
「姐さんに手を出したらどうなるか分かってんだろうな?」
姐さん?
その呼び方にハッとした。
いつだったかそう呼ばれたことがあったのを必死に記憶を手繰り寄せる。
どこで?誰だっけ?この人たち。
やっぱり見たことある。
あまりに凄まれたことで脱兎の如く逃げていった情けない男たちを見送ると私に向かって頭を下げるその三人に後退りをした。