第29章 停戦協定※
気が滅入るとは語弊があるかもしれない。
ただ自分にはお洒落の感性はない。
私の見立てが気にいるかも分からないし、もし気に入らなかったとしても宇髄さんは優しいからきっと着てくれるとは思う。
でも、気に入ったものを一緒に選びたかったけど、宇髄さんに何か贈り物をしたいと言ったら彼が「お前が選んだものが欲しい」と言ったから…。
「…もし、気に入らなかったらどうしよう…。」
「はぁ?!あんた馬鹿なの?あの男がほの花の選んだものを気に入らないわけないじゃない。」
「そ、そうでしょうか?私、見ての通り全然お洒落も分からないし、感性もないんですよ…!」
急に怖気付いた私を見て、四人が顔を見合わせて苦笑いを向けてくるが、男性に贈り物をあげたこともない私からすれば不安しかないのだ。
「大丈夫ですよ〜!天元様は絶対に喜びますっ!!緊張するなら私が渡してあげましょうか?」
「ちょっと!!あんたが渡したら何の意味もないでしょーが!!馬鹿須磨!!」
「いったぁーーーい!!うえーーん!酷いーー!ほの花さーん!まきをさんがぶったぁーー!」
ベシッという音と共にまきをさんが須磨さんを叩いたことで、須磨さんが抱きついて来たので窘めたが、頭の中はどうやって渡そうかということで頭がいっぱいだ。
二人の言い合いを話半分で聞くことしかできない私は何て薄情な女なのだ。
「あんた達、煩い!静かにしなさいよ。みっともないわね。」
しかし、瑠璃さんの一言で途端に静かになった二人を見て"長女"の貫禄のようなものを垣間見た気がした。
しがらみさえなければ瑠璃さんはとても良い人だと思うし、頼りになるお姉さんと言った感じでやはり私は好きだ。
「ほの花さん、それなら私が花火大会まで預かっておきましょうか?そうすれば少し予行練習ができますよ。」
「無理でしょ。この子、顔に出るわよ。」
「……あはは。えーと、ほの花さんに任せます、けど…。」
雛鶴さんの提案は凄くありがたい申し出だ。
確かに渡したいのは山々だが、まだ勇気が出ない。みんなは喜んでくれると言ってくれるが、実際反応を見るのは怖い。
初めて好きな男性に贈り物をするのだ。
それは仕方ないことだと思いたい。