第6章 君思ふ、それは必然
鍛錬が終わっても今日に限ってどこにも行こうとしないほの花。
縁側に座ってぽけーっと空を見上げている彼女に昨日の昼間であれば意気揚々と声をかけて隣に座り込み陽が暮れるまで、ほの花を独り占めしたことだろう。
しかし、今日は後ろからその様子を見て眉間に皺を寄せるしかない。
鍛錬はきっちりやっていた。それはもう寸分の狂いもなく、完璧に。
「まだやりますか?」なんていつもは絶対言わない台詞まで吐きやがって、この俺が「もう良いから休め」と言う始末。
それでも何があったのかを言おうとしないし、どことなくちゃんと目を見て話してくれないほの花にこれ以上入ってこないでくれと言われている気分で、後ろからこうやって見つめることしかできない。
そんな俺に助け舟を出してくれたのは元護衛のあの三人だった。
「宇髄様…少しいいですか?」
こそっとほの花に聴こえないくらいの声量で声をかけられると、目配せをして"こちらは来てくれ"と訴えかけられる。
ほの花から話して欲しかったが、あの調子なら時間がかかりそうだと分かっていたので後ろ髪を引かれる思いで三人について行った。
正宗の部屋に入ると「突然すみません」とやっと普通の声量に戻った三人が頭を下げてきたが、謝られるようなことではないのですぐにやめさせるとため息を吐く。
「アイツ一体何があったんだよ。ただでさえ顔整ってんのに本物の人形みてぇだぞ。」
「…本当は、我々から話すのは如何なものかと思いましたが、やはり宇髄様は知っていた方がいいかな、と…。」
「…俺だってお前らじゃなくて何があったのか自ら話させたかったけど、頑なに喋んねぇんだよ。それどころか目まで合わさねぇ。」
無理強いさせたくはないし、俺には話せないという状況もなんだか悔しい。
それでもそんな独りよがりな自尊心を捨ててでもアイツのことならば知りたい。
知った上で何かできるならば"俺が"助けてやりたい。