第6章 君思ふ、それは必然
──ガラッ
玄関が開く音が聴こえると複数人の足音が聴こえてきたので、恐らく正宗たちが帰ってきたのだろう。
しかし、その足音の中に軽くて聴き間違えようのないアイツのそれが混ざっていたから俺はすぐに立ち上がり玄関に足早に向かった。
すぐに来たはずなのに、そこにいたのは驚いた顔をした正宗たちのみ。
ほの花の姿はない。
ただ何ともバツの悪そうな顔をしていた三人に"何か良くないことがあった"のだと予感させる。
「…ほの花は?」
「…お部屋に行かれました。体調が優れないそうで今日はもう休むそうです。」
「な、熱は?風邪でもひいたのか?」
「すみません、そこまでは…。」
体調が悪いと言う割にはハッキリしない物言いに何かを隠していることなどすぐに分かる。
でも、コイツらが言わないということは回り回ってほの花の為を想ってのことだろう。
ほの花の許可なしには勝手にベラベラと俺に話すことが憚られる。
だから"言えない"のだ。
「そうか。ちょっと様子見てくるわ。」
「え、う、宇髄様?!」
「わーってるって。別に無理強いさせたりしねぇよ。様子を見に行くだけだ。」
「……」
そこまで言うと迷ったような素振りを見せた後、俺に向かい会釈をした。
こいつらだってきっと何が正しいのか分からないのだろう。
ほの花の部屋は俺の隣。
最初の頃はそこにした理由は特になかったが、今となってはたまに聴こえてくる鼻歌があまりに綺麗で壁にもたれて聴き入ったりすることも楽しみの一つになっていたり、すぐに会える距離感が餓鬼のように嬉しかった。
「おーい、ほの花大丈夫か?体調悪いんだって?」
しかし、いつまで経っても返事がないので「入るぞ」と声をかけて中に入った。
障子は閉め切っているが、まだ陽も高いので明るい光が少し屈折して入ってきていた。
綺麗に整えられた部屋の中央には不釣り合いなほど布団が乱雑に置かれてこんもりと丸まりながらほの花が寝ていた。