第29章 停戦協定※
「それで…この状況ってわけね。何してたのよ。あんたは全然分からないって顔ね。」
首を突っ込んだのは私だし、天元がどんなことで怒っていたのか興味本位で気になった。
こうなれば聞いてしまおうと思って、ほの花に聞いてみれば、彼女自身も答えを知りたいと思っているようでおずおずと話し始めた。
「…私、つい最近まで仕事で遠くに行ってたんです。一ヶ月ほど…。」
「ああ…、あの護衛の三人と一緒に?」
そう言えば何故一ヶ月此処にいなかったのかちゃんと聞いたことはなかったが、薬師という職業が明らかになった以上、患者の治療のために此処を離れていたというのは想像ができた。
「はい…。その、患者さんの内の一人が刀鍛冶の、方で…、私の武器を見て刃こぼれしてるところを整えて下さると言ってくれたので、お願い、したんですけど…。」
「…へぇ?あんた本当に戦えるのね。虫も殺せなさそうな顔して意外にやるじゃない。」
「む、虫…は、得意じゃないのもいます、けど…宇髄さんに鍛えてもらった、ので…ある程度は戦え、ます。」
恋人として認められないと思っていたけど、外見だけは認めざるを得ないほどの美人のほの花。
でも、師匠と弟子の関係でもあると言われた時、全然想像できなかったのは記憶に新しい。
何なら今でも俄には信じ難いが、本人が認めている以上そうなのだろう。
だとしても、武器を整えるのと今回の強姦未遂と関係があるのか?今のままでは全く意図が見えず首をかしげることしかできない。
「治療をしたお礼にって武器の刃こぼれを整えるだけじゃなくて、装飾やらを付けてくださったんです。可愛くなったから宇髄さんに見せたくて…見てもらったんですけど…。」
「それが逆鱗にふれたってこと?…見せてくれる?その現物を」
そういえば素直に武器を私に見せてくれるほの花に警戒心はない。
最初から思っていたけど、この子は隙だらけで、警戒心が薄い。そして話せば話すほど、裏表のない性格だと分かる。
要するにこの天真爛漫な状態を他の男の前でも晒しているということで、それだけでも天元からして見れば気が気でない案件なのは間違いない。