第29章 停戦協定※
逃げる腰を掴むと、"絶対に離すものか"と力を入れてそのまま無遠慮に打ち付けるが、いつもの艶やかな嬌声とは打って変わり、悲鳴のようなそれに胸が痛む。
優しくしてやりたい。
優しくしないと…。
理性などとうに切れてしまっている俺はそう思っていてもなかなか行動に移せない。
優しい言葉をかけてやれない代わりに少しでも気持ち良くしてやろうと蜜芽を摘んで押し付ければ、声の質は変わってきた。
でも、震える体はそのままでほの花が恐怖に怯えているのが見て取れる。
こんなのは紛れもない強姦だ。
一度だけ無理矢理こんなことをしてしまったことがあった。
その時、もう二度としないと誓ったくせにまた俺はしてしまっている。
ぐちゅぐちゅと蜜が溢れているそこは握り潰されそうなほどにキツくて、最奥に打ち付ければゴリっと音がする。
こんなお互いの身を削るような情交は誰が得をするのだろうか。
自分の嫉妬を押しつけて、ほの花を傷つけた。そんなことは二度としないと決めていたのに。
浅い呼吸を繰り返して、何とか耐えている彼女を見ると妙に冷静になってきた。
切れた理性が再び現れた証拠だ。
しかし、流石にこの状況は絶望的だと言っていい。
怖いくらいに静かな部屋にぬちゃ、ねちゃ…という蜜の音だけが響いている。
それが途端に虚しく感じてしまうと打ち付けていた腰をゆっくりと速度を落とし、やがて止めた。
淫音だけが響いていた部屋の中が突然の無音により気まずさだけが残っている。
手を握りしめて耐えていたほの花もその様子に異変を感じたようで、恐る恐るこちらを振り返った。
本来ならば此処で抱きしめて愛を囁くべきなのかもしれないが、今回強姦とも言えるこの行為をしたのは二度目のこと。
流石に会わせる顔がなくて、目を逸らすと絶頂を迎えることなくまだ硬く滾ったままの肉棒を引き抜いた。
「…てん、げん…?」
「…悪ぃ。頭冷やしてくるわ。」
ほの花に着物をかけてやると、自分も身なりを整えて、彼女の顔を一度も見ないまま部屋を出た。
俺を呼ぶほの花の声が聴こえた気がしたけど、振り返らず居間に向かった。