第6章 君思ふ、それは必然
「この町に住んでるの?あの里から出てきたのかい?」
発言からするとこの人はあれ以来里には一度も来ていないのだろう。いま行ったところで大量のお墓が立ち並ぶだけの変わり果てた里の姿を目の当たりにして発狂するだろう。
「…はい。この町に住んでいます。」
「そうか!僕は隣町に住んでるんだ。もし良ければ明日遊びに来ないか?家族に紹介するよ。」
「あ、いえ…。用事がある、ので…。」
「ならば明後日は?またこの時間にここで。いいね?では、明後日ね。」
妙に積極的な態度の清貴さんは半ば強引に日時を指定してきて、嵐のように去っていった。
取り付く島がないとはこのことだ。
それにしても無駄に傷つけられた傷口は深い。
まるで背が高いってだけで女として終わってると言われたような気分。
ただでさえ宇髄さんへの気持ちを自覚してしまい、絶望感に打ちのめされていたというのに…。
不死川さんも怒らせちゃうし、本当に今日は厄日だ。
「…ほの花様…?気にしたら駄目ですよ。」
「呆気に取られて言い返すこともできなかったですが、女性を外見だけで区別するしょうもない男です。」
「そうですよ、ほの花様は女性としてちゃんと魅力的ですよ。」
正宗たちが慰めてくれているが、ちっともうまく笑えない。
ハッキリと"お前はデカいから断った"と言われて地味に傷ついている。
それだけであればこんなにも落ち込むことはなかっただろうが、失恋確定な想いを自覚してしまったことで私の気持ちは沈む一方だ。
あてもなく散歩をする予定だったのにそんな気分になれず、結局帰る家は宇髄邸なので早々に帰宅することになった。
しかし、帰っても誰にも会いたくなかった私は体調が悪いと言ってまだ陽も高い内から布団に潜り込んだ。
宇髄さんも
雛鶴さんも
まきをさんも
須磨さんも
何度も様子を見にきてくれたが狸寝入りをしてしまった。
宇髄さんはきっと気付いていただろうが、何も言わずに頭を撫でてくれた。
その手の温かさに何度助けられただろうか。
でも、今はその温かさが
とても苦しい。