第29章 停戦協定※
本当は瑠璃さんともっと話したいけど、宇髄さんの言う通り必要以上に私と話したいと思うことはないだろう。
よく考えたら私のことなど嫌いだろうし。
そういう時は自分の想いなど蓋をした方がいいに決まっている。
瑠璃さんの部屋から戻ると宇髄さんに解毒剤を飲まされて一日中彼の腕の中で過ごした。
休みの日であってもゆっくりすることはほとんどなかった私たち。
何をするにしても宇髄さんが私を離さないので通りかかった正宗からも笑われた。
別に構わないのだけど、厠までついて来られると流石に恥ずかしい。
「あははっ!やーっぱりね。」
厠から出たところで再び宇髄さんに抱き上げられると、まきをさんが隆元と様子を見に来ていたようだ。
「何だよ、まきを。」
「いえ?天元様、きっとほの花さんが治ったら片時も離さないだろうなぁと思ってたんですよ。正宗さんから聞いて見に来ちゃいました。」
「うるせぇな。別に良いだろ。こいつは俺のなんだわ。」
「別に良いですけど〜?ほの花さん、おつかれさまです。」
苦笑いをしながら見送るまきをさんに助けてくれと視線で訴えてみるが、手を合わせて「ごめんなさい」と口をパクパクとしているだけ。
決して助けてくれないその様子に絶望しかない。
「ね、ねぇ…天元?」
「絶対ェ離さねぇ。」
「…あ、う、うん。」
「一ヶ月も離れてたんだぞ?こうでもしねぇとその間の埋め合わせなんてできねぇよ。」
そう言って拗ねたように顔を背ける宇髄さんが可愛くて頭を撫でてみる。
いつも大人で私のことを見守ってくれている彼だけど、たまに見せる子どもっぽい表情も大好き。
たまにの休みだ。
宇髄さんと思いっきりくっついているのも悪くない、か。
「あ…!そうだ!私、舞扇を綺麗に整えてもらったの!見て〜!可愛いの〜!早く部屋戻ろ〜!!」
そういえばまだ鋼鐡塚さんに綺麗にしてもらった舞扇を宇髄さんにお披露目するのを忘れていたと思い出す。
帰ったら見てもらおうと思っていたのに、いろいろと立て込んでいて忘れていたのだ。
「へぇ。良かったじゃねぇか。でも…可愛いってなんだよ、可愛いって…。武器だぞ…?」
意味のわからないと言った顔をしている宇髄さんだが、見たら分かるはずだ。
だって本当に可愛くなってるのだから。