第6章 君思ふ、それは必然
「どうしたも何も逃げ回るほの花様を連れ戻しに来ました。」
「逃げ回るって…。」
「宇髄様のことを意図的に避けてません?」
「サケテナイヨ…。」
「カタコトですね。」
正宗の"逃げ回る"と言う表現は的を得ている。この三人には嘘はつけない。
子どもの頃から一緒にいるのだ。私が何故こんな逃げ回るような真似をしているのかということすら手に取るように分かっているだろう。
「そろそろ避けられてるってバレますよ。いい加減にしないと。」
「だ、だって…!」
「好きになってしまうのが怖いんですよね?」
ほらね、やっぱり私のことなんてお見通しなんだ。核心を突いてきた隆元の言葉に何も言い返せず唇を噛んで下を向く。
分かってるならわざわざ言わなくてもいいのに…。
「怖いって感じてる時点で好きになってるじゃないですか。」
「んなっ!う、うるさいなぁ!実るはずのない無謀な恋を自覚させないでよ!忘れようと思ってるのにーー!大進の馬鹿ーー!というか、三人とも馬鹿ーー!」
「なんとでも言ってください。そんなに好きなら宇髄様に直接言えばいいんじゃないですか?」
「言えるわけないでしょ!私はただの継子なの!」
宇髄さんにとって私はただの継子。
こんな感情可笑しいから気付きたくなかったのに何で自覚させるようなこと言うかな?
あまりに意地悪な行動をされて悲しくなった。
この三人だって状況は分かっているはずだ。
妻のいる人を好きになったところで未来はないということを。
お店が立ち並ぶ大通りにはたくさんの人が行き交っている。そんな中で探していた人を見つける可能性ってどれくらいなのだろうか。
いくら四人でぞろぞろと歩いていて目立つからと言って確率はかなり低いはずだ。
それなのにこの日、私はその低確率を的中させて再会を果たしたのだ。
「ほの花?ほの花じゃないか?!」
急に声をかけられたかと思うと抱きついてきた人に驚いて体を固くした。
私のことを名前で呼ぶ人は少なくないが、出会った瞬間に抱き締められるような人に身に覚えはない。しかし、その顔には見覚えがある。
その昔、縁談を断られた人。
確か、名前は…
「き、清貴、さん?」