第6章 君思ふ、それは必然
でも、不死川さんとあの子では顔は面影があるのだが、女の子に手をあげた事件は許せないし、きっと他人の空似だろう。不死川さんは結構優しい人だし。
ただ一度覚えた既視感を拭い去ることが出来ず、軽い気持ちで聞いてみることにした。
「不死川さんって弟さんいますか?」
「はァ?急になんだァ?」
「あの、最終選別でちょっと顔立ちが似てる人がいたのでご兄弟かな?と思いまして…」
疑問に思ったことをそのままぶつけてみるが不死川さんは少しだけ目を逸らしたかと思うと、小さく「弟はいねェ。」とぶっきらぼうに言って、手を振って去っていった。
まずいことでも聞いてしまったのだろうか。
弟さん、亡くなってたのかな…?
もし、そうならばあまりに不躾なことを聞いてしまった。
今度会った時に謝ろうと思い、再びあてもなく散歩でもするかと気を取り直して歩き出す。
鬼殺隊としての仕事はまだ一度もしたことがないのだが、その内任務を言い渡されるだろう。もしそうなったら家を空けることになるし、宇髄さんと少し距離を置くことができる。
ただ私は産屋敷様のお薬の調合をするという大切な任務があるので遠方や危険な任務は与えられないだろうとしのぶさんが言っていた。
それに関しては少しだけ不満だ。
もちろん産屋敷様のお薬の調合も大切な仕事ではあるが、皆命をかけて戦っているのに、これでは何のために鬼殺隊に入ったのか分からない。
生き急いでるわけでもないし、死にたいわけでもないが、何とも割り切れない想いはある。
「ほの花様。」
足元ばかりを見て歩いていたため、前から来た人物に気付かなかったが、声をかけられ視線を上げると正宗たちが呆れたような顔でこちらを見つめていた。
「あー、何だ。正宗、隆元、大進じゃん。どうしたの?」
最近、私と話すことよりもあの三人の奥様たちと楽しそうに話している姿しか見たことなかったので随分久しぶりに話す気がした。