第6章 君思ふ、それは必然
家を飛び出してきたはいいものの、どこで何をするかも決められず"散歩"の概念が分からなくなる。
こんなことを長く続けられるわけがないと言うのも分かってる。これではまるで宇髄さんを避けているようだ。
本当は避けたくはない。
できるならば彼とたくさん話したいし、笑い合いたいし、一緒にいたい。
でも、一緒にいたら自分が自分でいられなくなりそうで怖いのだ。
三人の奥様たちのことも大好きだから傷つけたくない。それなのに頭の中は宇髄さんでいっぱいになってしまう自分が奥様たちを裏切っているように感じて受け入れられない。
行くあてもなくぼんやり歩いていると、ぽんと肩を叩かれた。
後ろを振り向くと見知った顔だが、宇髄さんでなくてホッとしてしまう。
「不死川さん!こんにちは。」
「おー、鬼殺隊合格したらしいなァ?まさか最終選別受けるとは思わなかったぜ。」
実は会うのは久しぶりの不死川さん。
一度、宇髄さんが玄関を破壊してしまってから怖くて会えずにいた。あの時は勝手なことをして怒らせてしまってのが原因なのだから、大丈夫だとは思うが、なんとなく不死川さんにも迷惑かけてしまったことを悔やんでいた。
「あはは…私もしのぶさんに聞くまで受けようと思ってはいなかったです。」
「まぁ、生きててよかったじゃねぇかァ。」
そう言ってぽんと頭を撫でてくれるその姿に既視感を覚えた。
あれ?どこで見たんだっけ?
誰かに似てると思ったのっていつのことだっけ?
不死川さんって全然血の繋がりないけど、どこか兄のような包容力のある人だと思うからまた兄に似てると思ったのだろうか。
でも、今回は雰囲気でなくて顔な気がする。どこかで不死川さんと似た人を見たんだ。
そこまで考えると最終選別で荒ぶっていた一人の少年を思い出した。
(…あ、そうだ…!あの時の子とどことなく顔が似てるんだ。)