第28章 無欲と深愛※
「まぁ、それだけじゃねぇけど此れ見て確信した。風邪じゃねぇなって。」
「…流石です。音柱様。」
「おちょくんな。馬鹿ほの花が。まだ言わないつもりならご期待に添えてこのままぶち込むぜ?」
耳元で呟く言葉は卑猥なもので私は身震いしてしまう。期待してるわけでもないけど、体は宇髄さんに調教されてるため勝手に反応してしまうのだ。
「…分かったよぉ…。言う。言います…!」
苦し紛れにそう言えばやっと起き上がり、絞った手拭いで体を拭き始めた宇髄さん。どうやら清拭をしながら聞いてくれるらしい。
きっと私が恥ずかしがったからだ。
流すように話せば、少しは恥ずかしくないだろうと気にしてくれたのだろう。
意を決して枕に耳を付けて彼の方に顔を向けると話し始める。
「…天元って…、瑠璃さんが初めての相手だったってほんと…?」
「………………は?あー…いや。まぁ、何だ。」
「瑠璃さんがそう言ってた。」
此処まで歯切れが悪いということは嘘ではないのだろう。明らかに言葉を探していて、それを誤魔化すように私の体を拭いてくれている。
「…やっぱりそうなんだ。」
「いや、その…、何つーか…、まぁ…。」
「そうなんでしょ?」
「そ、ソウ…デス。ナンカスイマセン…。」
カタコトで謝ってくれるけど、別に謝ってほしいわけではない。宇髄さんが初めてじゃないことくらい分かってたし、それを咎めるつもりは毛頭ない。だって過去は変えられないのだから。
「謝らなくていいよ?別に怒ってるわけじゃないの。ただ…そうやって自信満々に瑠璃さんに言われてちょっと悔しくなっちゃって…。毒飲むくらい私のが愛してるもんって…勝手に対抗意識燃やしちゃって…。だから、私のがごめんなさい。馬鹿なことしたって…ちゃんと分かってるよ。」
そう。ちゃんと分かってる。
自分がした愚かな行為を。
宇髄さんが謝ることなんてなくて、私が勝手に嫉妬してやったこと。そこに彼の落ち度はない。
「…確かに。それは馬鹿なことしやがって…って腹が立つけどよ。間違っちゃァいるけど…嫉妬してくれたっつーなら、ちょっと嬉しいと思っちまった俺も許してくれよ。」
その声は少しも怒っていなくて、目を合わせれば優しい顔で笑ってくれる宇髄さんに手を伸ばした。
そうすればその手を引き寄せて抱きしめてくれるんだ。