第28章 無欲と深愛※
撫でてやっていた手をそのまま頬に持っていくと吸い寄せられるように口づけをする。
「ん…っ…」
ひとたび口付けると欲が出るもので、少し離すと角度を変えて再び口付ける。このまま舌を差し込んでやりたい気持ちを何とか耐えながらも唇を離せずにいたが、自分の肉棒も反応しかけていたので名残惜しいと感じながらも唇を離した。
「あれ?風邪なのに止めなくていいのかよ。移るような口づけしたのに。」
意地悪を言ってほの花を見下ろせば、頬を膨らませて不満を露わにする。
「…もう、知ってるくせに…。」
「弁解があるなら聞くぜ?ほの花ちゃんよぉ。」
「…ないです。」
言い訳はないらしくて、俺を見つめると小さく「ごめんね」と呟いた。そんなほの花を見ると叱ってやろうと思っていた気持ちが揺らいでくる。
でも、言うべきことは言わないといけない。
俺は愛する女を失うことだけは御免だ。
「何で毒なんて飲んだんだよ。」
「…悔しかったから。」
「…く、悔しかった?はぁ?」
俺はてっきり瑠璃に無理強いされて、致し方なく飲んだものだと思っていたらどうやらこの口振りはそうではなさそうだ。
ほの花はたまにとんでもなく大胆なことをしてのけることがある。今回もそれならば頭が痛い。
恥ずかしそうに目線を彷徨わせるほの花の顔を掴むとバッチリと視線を絡ませた。
「何が悔しかったんだよ。弁解すんなら今だぜ?」
「…弁解…っていうか…、ね。ただ私は天元が好きで好きでたまらなかったってだけだよ。」
「な、は?お、お前!何だよ、派手に抱き潰すぞ?!」
突然の愛の告白に流石の俺も狼狽えて後退りしてしまう。ほの花は無意識だろうが、こちとら未だにほの花の一挙一動にドキドキするわけで。
そんな可愛いことを言われたら、照れているのを隠すために手で顔を覆うくらいしかできない。
「…抱き潰されてもいいよ。天元なら。」
見上げる瞳は艶っぽくて本当に抱きたくなってしまった。でも、相手は病人だ。
解毒剤が効いてきたからと言ってまだ体調不良なのだから無理強いはできない。