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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第28章 無欲と深愛※





途端に大人しくなった瑠璃に少しだけ胸が痛む。
コイツも宇髄家の…忍びの一族の家系に振り回された被害者なのだ。
やり方はまずかったし、許すには時間がかかる。
でも、一度は許嫁になっていた女だ。
情はある。

「…瑠璃。お前は俺の元許嫁だ。それ以上でもそれ以下でもない。だけど…嫁になっていたなら、きっと愛そうと努力はしたと思う。」

それしか言えなかった。
愛していたと思うなんて嘘でも言えなかった。

"愛してる"と言う言葉を思い浮かべた時、ほの花のことしか頭に浮かばないのだ。
もちろん瑠璃のことは当時、嫌いではなかった。年上で色んなことを教えてくれたし、若干上から目線でキツい物言いだが、本当は繊細な女だと言うのも分かっていた。

でも、家族としてやっていくには瑠璃が原因で不和が起きるとしか思えなくて断ることにした。


今となってはそれしか言えない。
ほの花一人を愛し抜くと決めてからというもの他の女のことを考えることすらできない。


「…嘘でも愛してたって言いなさいよね。女心分かってないわね。」

「悪ぃな。ほの花しかいらねぇからよ。俺のことはどれだけでも責めてくれて構わねぇ。」

「もういいわ。近い内に出て行く。ありがとう。」


そう言うと襖が閉まる音が聴こえるまで俺はそちらを振り向くことはしなかった。
遠ざかる足音に深いため息を吐くと、再び夕食に向き合う。

何も言わずにただその場にいた元嫁たちも居心地が悪そうに留まっている。
コイツらにも悪いことをしたと分かっている。

全ては俺の責任だ。
ほの花を誰よりもなによりも愛してしまった。

それでももう後戻りはできない。


「天元様ぁ…。私は…ほの花さんと天元様、とてもお似合いだと思います。だから気に病まないでくださいね!!私が嫁ぐ時には花嫁衣装とか高ーいやつ整えてくださいよ〜?」

須磨は空気が読めないときもあるけど、こういう時空気を和らげてくれて本当に助かる。
気まずい雰囲気もそのおかげで柔らかくなり、笑い合うことができた。

「そうだな。お前ら、俺に任せとけ!」

「天元様、お父様みたい…」

「放っとけ!」


犠牲を払っていまの幸せがある。
だからこそ、俺はほの花を幸せにすると決めている。
どんなことが起きてもほの花だけは守り抜く。



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