第28章 無欲と深愛※
ほの花に毒を飲めって言って、飲んでも飲まなくてもコイツの気持ちは決まっていた筈。
だけど、飲むわけがないと思っていたところ一瓶全部飲み干されて怖くなったと言うところだろう。
確かに話を聞けばほの花もほの花だが、その前の行いの悪さから誰一人として瑠璃に味方する者はいない。
自業自得だ。
ほの花も後で叱りつけねぇといけないけど、まずはコイツを追い出すことが先決だ。
俺を怒らせたことを後悔させてやる。
「今すぐ出て行け。出て行かねぇならこの場でぶっ殺す。もっと早くそうするべきだったな。俺の責任だ。早く決めろ。」
「天元がその気なら殺せばいいわ。どうせ私を許す気はないんでしょ?それなら遠慮しなくていい。」
「…仕方ねぇな。恨むなら俺を恨め。ほの花は関係ねぇから。」
すると、瑠璃の首に手をかけようとした時、襖が勢いよく開いて涙目のほの花がデカい声を上げて入ってきた。
「天元ーー!!聞いてよぉぉっ!酷いのぉーーー!!これ見てよぉーーー!!」
発狂しそうになりながら俺に抱きついてきたかと思うと、手にはボロボロになった布切れが握られている。
どこかで見たような色ではあるけど、何が何だか分からない。
涙を浮かべてはいるが、この状況を悲しんでいるわけではなさそうで、ただその手の中にある物のせいで泣いている…?
「っ、は?!お、お前、寝てろって言ったろ…って、何だ、それ。」
「瑠璃さんがぁーー!私の大事にしてた天元に買ってもらった膝掛け破いたぁぁ!!酷いーー!!!」
「……あー…、それあの膝掛けか…ボロ雑巾かと思ったわ。」
「ぼ、ボロ雑巾…!?」と俺の発言にまず衝撃を受けているほの花だったが、俺の前にいた瑠璃を見つけるとツカツカと歩み寄ってその膝掛けを突きつけた。
「瑠璃さんーー!こんなとこにいたんですかー?!どうしてくれるんですかぁーーー!これ、お気に入りだったのにぃ!!!この色なかなか売ってないんですよぉ!ちゃんと同じやつ買ってきてくださいよー!!」
「え…?」
「買ってくるまで許しませんからね!!」
そう言うことかよ。
コイツ…聞いてやがったな。
絶妙な時機を図って此処に乗り込んできたあたり、策士なのは間違いない。
そんなほの花を見ると笑いが込み上げた。