第28章 無欲と深愛※
「…テメェ…、ふざけんなよ…?アイツが死んでたらどうするつもりだった…?」
「何故怒るのよ。平気だったんだからいいじゃない。風邪をひいたのは私のせいじゃないわ。」
「風邪じゃねぇよ。明らかにアイツは毒の症状が出てる。」
「はぁ?!悪いけどそれなら二日前には出てる筈よ。ピンピンしてたわ!間違いなく。」
私にだって言い分はある。
ほの花は元気そうだった。
そんな筈はない。
それなのに追及の手を緩めることはない天元が奥歯を噛み締めながら睨みつけてくる。
「…アイツの背中に湿疹が出ていた。普通の風邪ならそんなモン出やしねぇよ。何らかの中毒症状が起きてるからだろうが。」
それを聞いて目を見開く。
確かに…、天元の言っていることも一理ある。
ほの花は一人で大量の毒を飲んでしまっていたし、中毒症状が出るのもおかしくない…
けど、それならそんなもんじゃ済むはずがない。
「…そ、そうだとしても…あの子、一瓶一人で全部飲んだのよ?!そんなもんじゃ済まないわよ!耐性があったんでしょ。私のせいじゃない。八つ当たりはやめて。」
「あるわけねぇだろ。アイツは忍の家系じゃねぇ。」
「だったら何で無事なの?!説明して頂戴!」
「俺が知るわけねぇだろ。ただアイツは薬師だ。詳しいことはわからねぇが、薬飲んでたんじゃねぇの。」
薬師…?
それを聞いてやっといろんなことが一本の線で繋がった気がした。
あの温室にあった趣味の悪い草は薬草ってこと?それなら毒に対抗できるかもしれない。
勝算があったから飲んだと言うこと?
そんなことも知らなかったから毒を飲ませたけど、それならばこちらは悪くない。
ほの花の薬師としての能力の問題だろう。
「…薬師としての能力がないからって私に責任を押し付けないで。確かに飲めと言ったのは私よ。それは認めるわ。でも、飲んだのはあの子の責任でしょ?私は知らないわ!薬師って言うなら余計に私は関係ないでしょ?!勝算があったから飲んだに過ぎないんだから私に責任転嫁しないで。」
「…おい、それ以上喋んな。虫唾が走る。」
何で。
何で?何でなの?
何で…私を責めるの?
私だけが悪いみたいな言い方するのよ。
身から出た錆ではあるが、この状況に流石に悲しくなって来て唇を噛み締めた。