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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第28章 無欲と深愛※





艶々に輝いて見える三角形に握られた塩にぎり
その横にはお茶碗に白粥も添えられている。
それだけでは栄養が取れないからと温かいお味噌汁は具は少なめで豆腐が多めに入っていた。


「…うっ、うっ…美味しい…!!」


雛鶴さんが赤い目をして持ってきてくれた私の夕食に感動して涙が溢れそうだった。
そんな私を見て苦笑いを浮かべている宇髄さんだけど、体を支えてくれている。


「そりゃ良かったな。しっかり食ってまた薬飲んで寝ろ。いいな?」


「もう寝れない…。ちょっと眠り疲れたし、横になるのに飽きた…。」


「…お前、まだ微熱あるだろうが。舐めてんのか?」


「だ、だってぇー…。」


微熱があるし、多分まだ目眩も残ってる。
解毒剤の効果は絶大だが、一度で全て解毒されたわけではない。いま、体調が良いのは間違いなく、一緒に飲んでいた対症療法の薬の効果もある。
宇髄さんの言葉は尤もで、まだ寝ていなければいけないのだけど、四時間も抱きしめられたまま自由にならなかった空腹の時間のせいでまだ起きていたいのだ。
しかし、そんな私を許してくれる宇髄さんではない。
普段は我儘を言っても怒ったりしないし、優しい彼だけど、私の体のことが関係すれば途端に厳しくなる。

それも心配してくれているからだと思うけど、隣から突き刺すような視線が注がれている。


「だってじゃねぇわ。犯すぞ、コラ。」


「うん、いいよ!抱いて?」


「は…?!ば、馬鹿か!熱あんだろ!」


「ええー?!嘘だったの…?」


「嘘っつーか…抱きてぇのは山々だけどよ…。」


いや、待て待て待て。
私はひどい風邪だった!
簡単に抱かれたいみたいなことを言ってしまえば、いつもの私らしくない。
それは風邪じゃないと宣言しているようなものだ。

宇髄さんも口籠もったのは幸運だった。


「…う、あの…風邪だから駄目か…。治ったら…お願い、します…。」


「……風邪、ねぇ。…フッ」


だけど、その言葉を繰り返すと含みのあるような笑いが聞こえてきたのが、少し怖かった。

温もりは優しい宇髄さんのままなのに、その言葉は私に向けられていない気がした。

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