第28章 無欲と深愛※
「ほの花さん、体調悪かったなら言ってくださいよぉ…!倒れるまで無理しないでくださいぃ…!ふぇ、う、う、…!」
「ちょっと!あんたが泣いてどうすんのよ!ツラいのはほの花さんなんだから!」
「二人とも静かにして。ほの花さんの体を拭きますね。正宗様達は…あ!もう退出されてますね。」
次々とかけられる声に体はしんどいのに、心が元気になる気がした。
案の定、宇髄さんは瑠璃さんを疑ってる。
こう言う時の宇髄さんは厄介だ。
ありがたいことに私のことに関して鼻が効くのか、笑えてくるほどの洞察力に舌を巻くしかない。
宇髄さんが湯浴みに向かうと、直ぐに正宗達も出て行き、遅れて瑠璃さんもこの場を後にした。
雛鶴さんが襖が閉まってることを確認すると布団を退けて体を熱い手拭いで体を拭ってくれる。
「ほの花さん、須磨の言葉も尤もですよ。無理したら駄目です。私たちのことを気にかけてくれるのは嬉しいですけど…やっぱり私は元気なほの花さんが大好きです。」
「雛鶴さん…。ごめんなさい。でも、ずっと体調悪かったんじゃないんです!突然、悪化したみたいで…!迷惑かけてごめんなさい。薬飲めばすぐ良くなります!」
ごめんなさい。嘘ついて。
本当は二日前からずっと毒による症状で死にそうだった。浴びるほどの水を飲んだことと対症療法をしていたことで死は免れてるが、体力は物の見事に奪われていっている。
気を失ってそのまま宇髄さんに発見されるなんて思いもしなかった。
完全に誤算だ。
いや、最大の誤算は自分を見くびっていたこと。
薬師だから大丈夫だなんて、今となっては口が裂けても言えない。
薬師だから
医療者だからと言って
血液検査もなしに薬を飲みながら効く薬を探すなんて無謀すぎた。
よく生きていたと思う。
しのぶさんのところに行って血液検査した後に、合う薬を作ればよかったのだ。
だけど、悔しくてできなかった。
瑠璃さんに負けた気がして。
宇髄さんの初めての女性というのが頭から離れなかったんだ。
だから悔しくて悲しくて、私の力だけで何とかしたかった。
それなのにこのザマは何?
結局、みんなに迷惑かけるならそんな意地張らなければ良かったじゃないか。