第28章 無欲と深愛※
水を吸い込み、重くなってしまっている夜着を脱がせると敷いてあった布団の上に横たえる。
投げ捨てた夜着がベチャ…と音を立てて畳の上に転がるがそんなことに気を取られていられない。
掛け布団を体に巻き付けてやると俺も雨具を脱ぎ捨てて、やっとほの花の顔に触れる。
雨で前髪がペタリとくっついてしまっているが、そこが蒸発しそうなほど熱い体に震えが止まらない。
バタバタと部屋に雪崩れ込むように入ってきたのはいつもの六人。
「「「天元様!!」」」
部屋に入ってくると、その惨状に目を見開いて固まっている。反応に間違いはない。
俺だって未だにどうしたのか状況が飲み込めないのだから。
「すぐ湯を沸かしてくれ。あとできるだけ多くの手拭い、手桶に水も入れてきてくれ。」
怯えたようにコクコクと頷くと出て行った三人の元嫁。残った正宗達はこちらを見て言葉を紡ぐ。
「宇髄様、少し代わりますので、お着替えください。」
「いや、いい。」
「宇髄様まで体調を崩されたら元も子もありません。」
「………見んなよ。夜着は脱がせてあるんだからよ。」
「いや…この状況でそこに頭が回る宇髄様が凄すぎます。我々ほの花様の裸見ても何とも思いません。」
正宗たちに呆れた顔を返されるが俺からしたら死活問題で、誰であろうとほの花の体を見られるのは抵抗がある。
「新しい布団も持ってきてくれ。その布団は水浸しで使えねぇからよ。」
そう言うと隆元と大進が頷き、布団を取りに行ってくれた。
残された正宗は俺の代わりにほの花の髪を拭いてくれている。
自分の隊服を脱ぎ捨てて、夜着を身につけると少しだけ冷静になってきたのが分かる。
帯を結びながらも気になることが頭の中に無数に思い浮かんでは埋め尽くして行く。
「…何があった?」
そう正宗に聞いても、こちらを向き首を振ることで「知らない」意を表す。
「…は?」
「…私にも…何が何だか…。ほの花様、外で倒れていたんですか?」
「……ああ。」
正宗達すら知らないと言うことはどう言うことなのだ。
状況的にほの花が誰かに何かをされたと言う確証はないが、俺は此処にはいない一人の関与を疑わざるを得ずに震える拳で壁を殴った。