第28章 無欲と深愛※
朝起きて、天井が目に入っただけなのにどれほどホッとしたか。
(…生きてる。良かった。)
瑠璃さんのあの憔悴ぶりを見る限り、飲み干したその毒は決してお遊びで飲むような物ではないと言う事だけは分かっている。
案の定、体は正直だ。
汗は噴き出し、酷い頭痛と倦怠感。
体は燃えるように熱い。
それなのにまだ震えが止まらなくて寒くてたまらない。
口から漏れる息も熱い。
夜飲んだ解熱剤のおかげで恐らくは下がってこの状態なのだろう。
あらゆる可能性を考えて作った解毒剤はとりあえず四つ。
しかし、かなり強いものだから6時間は開けないと次が飲めない。
要するに現段階だけでも二十四時間必要。
これで効かなければ別の薬を試してみないといけないけど、その頃にちゃんと体が動くのか微妙なところだ。
何とかこの四つのうちのどれかが効いてくれることを祈るしかない。
ゆっくりと体を起こすと今度は猛烈な眩暈に襲われてそのまま布団に逆戻りをした。
ぐるぐると天井がまわる。
解毒剤とは別で対症療法の薬も追加したいが、いくらなんでも飲み過ぎだ。
薬は飲み過ぎると胃に負担をかけるし、逆に生まれ持った免疫力も下げてしまう可能性もある。
だけど、いくらなんでも眩暈に襲われてたら何も出来やしない。
情けなくも赤ん坊のように這って薬箱まで行くと、眩暈止めの薬を追加で服用する。
外を見ればまだ薄暗い。
寝過ぎたわけではないことだけが救いだ。
私が起きてこなければ流石に誰かが怪しいと思って起こしにきてしまう。
バレないようにしなければ何の意味もない。
お互い後腐れなく、納得し合うためには誰かにバレて彼女が責められたら何の意味もない。
蟠りは残したくない。
それは私のためでもある。
私だってバレたら宇髄さんに怒られるに決まってるのだから内緒にしたい。
この時点で私と瑠璃さんの利害は一致している。
少し布団の上で薬が効いてくるのを待つと、再びゆっくり起き上がり、着替えをした。
それに自分から元奥様に休暇を提案したのに逆に迷惑かけるなんて恥ずかしくてたまらない。
何としても自分の責任だけは果たさなければ。