第28章 無欲と深愛※
夕飯の後片付けをほの花さんと一緒にするのはめずらしいことではない。
あまり家事を手伝えないからと言って、食事の後片付けはほとんどほの花さんがやってくれる。
たまに天元様が金魚の糞みたいに彼女にずっとくっついていることもあるけど。
「あの、紅ありがとうございますぅ…!浴衣買ってもらったばかりなのにすみませんーーっ…!」
「良いんですよ。あ!そろそろ取りに行かないとですね?また日程合わせて一緒にいきましょう!」
ほの花さんは本当に気遣いの人。
私たちが天元様の元嫁だと言うことを気にしてくれているのかなぁ。
そんなこと気にしなくて良いのにいつも私たちのことを立ててくれていて、遠慮ばかりしていると思う。
お風呂だって絶対に先に入らないし、天元様の恋人になったのに家事をできないことをいつも気にしている。
薬師の仕事もあるし、鬼殺隊の任務もある。
鍛錬だってあるのだから本当に気にしなくて良いのにこうやってお詫びと御礼を定期的にくれたりする。
浴衣みたいな高いものを買ってもらったのは初めてだけど、甘味やら紅茶やら美味しいものを買ってきてくれたり…。
そのかわりほの花さんが自分の物を買ってるところは見たことがない。
それは天元様も言っていたから間違いないのだと思う。
ほの花さんだって任務後の長期休暇なのだからゆっくりしてくれたらいいのに、今度はお湯を沸かし始めて茶器を出してきた。
「何してるんですかぁ?」
「瑠璃さんとまきをさんにお茶を淹れようと思って。須磨さんも要りますか?」
「え!わ、私は大丈夫ですーー!」
瑠璃さん?
いつの間にか仲良しに…?
いや、でも、さっきの食事中はそんな感じには見えなかった。瑠璃さんはほの花さんを終始無視してたし…。
「あ、の…瑠璃さんに無理やり頼まれたんですかぁ…?」
「えー?いえいえ!そんなことないです!進んでやってます!」
そう言って筒から調合した茶葉を取り出すと、急須に入れるために下を向いた瞬間、一瞬顔色が悪い気がした。
すぐにこちらを向いてニコニコしているほの花さんがいつもと変わらないので夜遅いから光の加減でそう見えたのかもしれないと思い、部屋に戻ってしまった。
何故あの時気付かなかったんだろう。
本当に私はとろくて時々自分が嫌になる。