第28章 無欲と深愛※
──天元の初めての女は私なの
分かってた。
宇髄さんの初めてが私でないことくらい。
生娘の私を女にしてくれたのは彼だけど、慣れている様子だったし、アレほど美丈夫だ。
女の人とそういう関係になるのは多かったであろう。
だから何人目の女でも仕方ないと思っていた。
でも、宇髄さんの"初めて"をもらった人が目の前にいるという事実に動揺を隠せなかった。
今更初めて性交した相手が瑠璃さんだと知ったところで何もできることはない。
嫉妬で乱される心もどうしようもないのだ。
「…そう、なんですね。初めて知りました。」
「天元は優しいからあなたが傷つかないように言わなかったんでしょうね。」
そう。確かに宇髄さんは優しい。
きっと私が気に病むと思って言わなかったのは当たってると思う。
乱されるな。
聞かされたところでどうすることもできやしない。
今の彼の愛を信じているし、疑う余地はない。
「彼のは大きいから受け入れるの大変でしょう?慣らし方も口づけの仕方も全部私が教えてあげたのよ。ちゃんと気持ちいいでしょう?」
「…はい。」
──聴きたくない。
「舐めるの好きよね?全身舐めてくる天元が懐かしいわ。今でもそうなの?」
「あー…あはは。」
──知りたくない。
「最初はガツガツと荒い抱き方だったけど、だんだんと余裕が出てきて優しく抱けるようになったわ。良かったわね。あなたには優しいでしょう?」
「……はい。」
──やめて。
「もうあなたといがみ合うのも面倒になってきたし、天元がどこが気持ちいいか教えてあげましょうか?同じ男性に抱かれる仲なのだから仲良くしましょう。」
「…け、結構です。」
──もうやめて。
頭の中がおかしくなりそうだった。
昔の宇髄さんのことは知らない。
知らないけど知らなくていいと思っていたのは嫉妬でおかしくなりたくなかったからだ。
だけど、瑠璃さんのことを傷つけておきながら自分が傷つけば途端に彼女を責めたくなってしまう自分はなんて浅ましい女だ。
品性を保って、毅然とした態度で接しなければ。
そうしなければ私は彼女と同じだ。
必死に自分の心を戒めると、精一杯の笑顔を向けた。