第28章 無欲と深愛※
もっと突き放されるかと思いきや、瑠璃さんはちゃんと贈り物を選ぶのを付き合ってくれた。
放置して帰ることもできたと言うのに。
やはりそんなに悪い人じゃないのだ。
よほど悔しかったのだろう。
宇髄さんの嫁になることが決まっていたのに突然置いて行かれた上に、知らない女が婚約者になっていて腹が立つのは致し方ない。
だからと言ってあんなに暴言吐かれる理由にはならないが、私だって嫉妬くらいする時あるし、分からないわけではない。
それでも私が瑠璃さんの気持ちを分かるような物言いをすれば馬鹿にしていると思われてしまうだろうし、慎重にならなければきっと彼女は怒ってしまうだろう。
紅を贈ったのは深い意味はない。
最初はあげるつもりはなかった。
でも、思ったよりも真剣に一緒に選んでくれたのが嬉しくて御礼をしたくなった。
それだけのこと。
彼女だって人の子だ。
完全には分かり合えなくとも、何をしても無駄というわけではない筈。
宇髄さんがいない間に少しでも距離を縮めたいた思っていたので、私は人知れず拳を握りしめた。
一つ一つやるしかないのだ。
そうしなければ始まらない。
雛鶴さんから頼まれた材料を買いこみ、家路に着いても瑠璃さんは私の顔を見ることもなかったが、気にしている時間もない。
約束の一週間まであと五日しかないのだ。
「雛鶴さん、これいつもの御礼です。使ってください〜。」
「え…?!わぁ、素敵な紅…!でも…この前も浴衣を…!」
「良いんです。三人分を瑠璃さんが一緒に選んでくれたんです!ふふ。嬉しかったです。だからもらってください!」
「…瑠璃さんと…?え、大丈夫でしたか?」
雛鶴さんは心配そうな顔を向けるが、何もされていないどころか彼女は私の我儘を聞いてくれた。
「はい!大丈夫です!絶対瑠璃さんと仲良くなるって決めたんです〜!」
「…ほの花さん…。」
もちろん宇髄さんとのことを認められたいと言うのはある。
でも、それは二の次だ。
まずは私と言う人間を認められなければ、宇髄さんとのことを認めてくれるわけがないのだから。
仲良く…まではなれずともせめて嫌われている状況は脱したい。
そう意気込む私を雛鶴さんはただ心配そうに見ていた。