第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
「他には?どんなことがあった?」
「え、えと…。」
どうしたんだろう。
宇髄さんはいつも私の話を聴いてくれるが、ここまで深く掘り下げることはしてこなかった。
私のことを継子として大切にしてくれていたのは知っていたけど、それ以上に彼との間には見えない壁のようなものも感じていた。
それがあるから悲しいとかではなく、師匠として線引きしているように感じていた。
だから私も極力宇髄さんの私生活に首を突っ込んだことはない。
私生活は私生活。
師匠と継子の関係性の維持をお互いに共有しているようにも思っていた。
それなのに今日の宇髄さんは自ら私のことを知ろうとしてくれてる、そんな感覚だ。
「…えと、二十人くらいいたんですけど、七日後に残ってたのは私を入れてたった五人でちょっと怖くなりました。いま思えば誰にも会わなかったけど、助けに行った方が良かったのかな、って…。」
「そんなもんよ。いつもより多いくらいじゃねぇの。助けに行ったせいで弱い奴に巻き込まれる可能性もあるんだからそれで良いんだ。生きてるってことが重要なんだから。」
あまりの生き残りの少なさに少しだけお茶会なんてしていた自分に後ろめたさを感じていたので宇髄さんの言葉で少しホッとした。
それにしてもアレでいつもより多いって…。私は本当に恵まれてるんだ。"柱"の継子として事前に鍛錬ができたのだから。
「宇髄さんに鍛錬してもらえて良かったです。ありがとうございます。」
「まぁな。それで?どんな奴がいた?」
「え?え、えーっと、…、」
今日宇髄さんは何だか人が変わったように質問をしてくる。
"話をしよう"と言うだけあって次から次へと話を聞こうとしてくれるのは嬉しいが、変な感じがした。
閉められたままの襖がやましいことなどしていないのに落ち着かない。