第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
他には…?
他には…えっと、…。
宇髄さんの様子がおかしくて(?)思い出そうと試みるがどうも集中できない。
それでも脳裏にふとよぎるのは傷のある曇りなき眼の少年の姿。
「…あ!えと、竈門炭治郎くんとお友達になりました!」
「…は?友達?」
「そうなんですよ。ずっと炭治郎くんを探してたので会えて嬉しかったです。年下なんですけど正義感が強くてすっごい良い子なんです!」
「…ふーん。」
どうして少しだけ冷たい空気が流れた気がしたんだろう。先ほどまで柔らかい笑顔だった宇髄さんの顔はいつの間にか引き攣っていて状況判断に時間を要する。
「つーか、探してたってどういうことよ。元々知り合いだったのか?」
顔は引き攣ったままだが、ちゃんと会話を続けてくれる宇髄さんに怒っているわけではなさそうだいうことだけが分かる。
しかし、この話題を長く続けることが負の要素になるような気がして気持ちが焦る。
「私じゃなくて冨岡さんのお知り合い?らしくて…。名前だけ聞かされたのでどんな人なんだろう?って…。」
「冨岡の知り合い?」
「そうです!この前送って頂いた時に会話に困って継子いないのか聞いたら継子はいないけど、知り合いが最終選別に参加するって教えてくれて…。」
「…それで友達になったってことね。」
どんどん低くなる宇髄さんの声に余計なことでも言ってしまったのだろうかと気が気じゃない。
彼と話してて話題に困ることなどないのに今は早く夕食に呼ばれないかと願わずにはいられなかった。
「お前、あんま男に隙見せんじゃねぇぞ。」
「え?隙?」
「隙だらけなんだよ、ほの花は。」
「そうですか?え…?!た、炭治郎くんは鬼じゃないですよ?!」
「わぁーってるわ!!」
「……、???」
やっぱり今日の宇髄さんはなんか変だ。
熱でもあるんだろうか。だが、様子がおかしい以外はいつもと変わらないように見えたので、余計に首を捻るしかなかった。